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130話 人を隠すなら人の中!

 「あいつって誰ですか?」

 パレットが尋ねる。

 「パレットは知らないか。ユウは一言で言うと可哀想な奴だ」

 アオがユウについて話し始める。

 「可哀想な奴ですか……」

 「自分の事を勇者だと思っているんだ。今日あいつが何を言ってもちゃんと温かい目で見てあげろよ」

 「分かりました。温かい目で見ます」

 アオは相変わらずユウに厳しいな。

 ここは僕が少しフォローしておこう。

 剣のアドバイスを貰ったお礼もあるしね。

 「アオはこんな風に言ってるけどユウはかなり強いよ。剣の腕だけで言えばチェンジワールドオンライで一番強いのはユウだと思う。『タッグマッチトーナメント』2位、『宝探しゲーム』2位の実力は伊達じゃないよ」

 よし。

 これで多少はフォローできたかな?

 「2位!?また私よりも上ですね。その人と戦いましょう。それで私が勝てば実質私が2位ということになります」 

 パレットが2位ということにはならないと思うよ……。

 でも、ユウ対パレットは見てみたいな。

 多分、一瞬で勝負がつくと思うけど。

 「戦ってみるのもいいと思うよ。ユウも喜ぶだろうし。ユウは戦うことが大好きだからね。勝負の初めには『宝探しゲーム』で自分が何位だったかを言うといいかも。本気で相手をしてくれるはずだよ」

 「本気に勝つ私……。そうしましょう。本気に勝ってこそ2位という地位を得ることが出来ます」

 「パレット頑張ってね!私応援してるよ!」

 「見ていてください。華麗に勝利して見せます」

 その自信はどこから出てくるのだろうか?

 まあ、戦わない僕達は楽しく見学させてもらおうかな?


 パレットにユウの説明をし終えると僕達はユウを探し始める。

 先ほど坂の上から見たときにユウがいた場所を見るとユウの姿はそこには無かった。

 何処に行ったんだ?

 確かにさっきまであそこにいたはずなのに……。

 上から見るのとここから見るのではやはり探しやすさが段違いだ。

 上からは全体がよく見えたけど、ここからではプレイヤーとモンスターが入り混じっているせいでまともに人探しも出来ない。

 この際ユウじゃなくてもいい。

 知っている人がいれば……。

 そう思って探しているとニーヤさんを発見した。

 ニーヤさんは何かに怒っているみたいだった。

 ここからは分からないが何か叫んでいるようだ。

 ニーヤさんが叫んでいる方向を見るとかなり遠くの方にモンスターを切り倒しながら進むユウの姿があった。

 「見つけた!」

 「どこですか?」

 「あそこにニーヤさんがいて、その先にユウがいる!」

 こうなったらニーヤさんに話を聞こう。

 そう思ったのだが、僕達の思い通りにはいかないらしい。 

 ニーヤさんはユウを追いかけて行ってしまう。

 ニーヤさんが遠くに行ってしまう!

 「僕達も追いかけよう!」 

 「はい!」

 僕達はユウを追いかけるニーヤさんを追いかけ始めた。


 ニーヤさんを追いかける僕達だが順調に距離が縮まってるとは言い難かった。

 ここはとにかく追いかけずらい!

 プレイヤーとモンスターだらけで視界も悪いし、それを避けながら進まなくてはならないので戦っている最中のプレイヤーの傍を通る時などは邪魔にならないようにするのも大変だ。

 「もー、全然追いつかないよー」

 レイクが言う。

 ユウを見れば全然追いついていない、むしろ距離が離されている気がするが、ニーヤさんとの距離は少しは縮まった。

 このまま追いかけていては時間がかかる。

 一気に勝負に出よう。

 「ニーヤさん!」

 僕は大声でニーヤさんを呼び止める。

 ニーヤさんは足を止め振り向いた。

 成功だ!

 「ニーヤさんこっち!」

 僕はニーヤさんに分かるように大きく手を振る。

 「ニーヤちゃんこっちだよー!」

 レイクも大きく手を振る。

 レイクとニーヤさんは直接のかかわりは無かったけど『宝探しゲーム』の打ち上げで仲良くなったらしい。

 仲良くなったというのは後日レイクから聞いた情報だけど……。

 ニーヤさんが僕達に気づいて近づいてくる。

 「ちょっと話を聞きたいんだけど……」 

 「それなら後にして。今はあのバカを止めて。一旦落ち着かせたいの。エルカターナの街を見てからテンション上がりっぱなしで、ここに来てからはずっと戦いっぱなしなのよ。集中し過ぎて私の声すら届いてないわ。私の魔法を当ててでも止めたいけど私はこのプレイヤーとモンスターの群れの間を通す制度の魔法は打てない。だからあなた達が止めて。止めてくれたら好きなだけあなた達の話を聞いてあげるわ」

 「アオお願い」

 「任せてください!」

 アオは弓を思いっきり引きユウを狙う。

 「大丈夫なの?」

 レイクが心配そうに聞く。

 「大丈夫よ。《五感強化》を使っていたら問題ないわ」 

 「使っていなかったら?」

 「使っていなくてもあのバカならどうにかするわ」

 どうにかするって……。

 凄く信頼されてるのか?

 アオが矢を放つと真っ直ぐユウ目掛けて飛んでいく。

 矢は数多くのプレイヤーとモンスターの隙間を通り抜けユウの元まで到達した。

 ユウは近づいてくる矢に気づいている様子は無かったがすれすれで避けた。

 「危ねえーな!誰だ!ってフータじゃねえか!こんなところで何してんだ?俺と戦いに来たのか!」

 戦うけどユウではなくモンスターとだよ!

 ユウはすぐに僕達の所へ来た。

 「戦うか?」

 「だから戦わないよ!」 

 どうやらユウは戦うことしか頭にないらしい。


 外出中に知り合いと会うと何だか超気まずいですよね。

 それもそこまで仲良くなかった、中学の同級生とバッタリ会ってしまって何を話せと!?

 「お、おう……。元気?」

 「うん。元気元気」

 「じゃ、じゃあな。また……」

 「う、うん。また……」

 こんな会話ならいっそうの事話さない方がいいのではないかと思いますが、話さなかったら話さなかったで少し気持ち悪さが残るんですよね。

 自分が先に発見すれば見つからない様に避けたり隠れることもできるんですけど……。

 アルバイト中にお客さんとして別に仲良くなかった同級生が来た時もどんな顔をすればいいのか分からないですよね。

 「あ……ここがバイト先なんだ……」

 「うん。今はここでバイトしてるよ」

 「そうなんだ。頑張ってね」

 「ありがとう」

 「じゃあ、また来るね」

 「うん。また」

 こんな会話をしてまた来た人を僕は見たことがないです……。


 今日も読んでいただきありがとうございます!

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