116話 喧嘩するほど仲がいい!
中央に早く向かいたい俺だったが途中レイクがアイランドゴリラ狩りにハマってしまい一度に10匹を相手にするという出来事があったり、それを見たパレットがレイクに対抗心を燃やしてどちらがアイランドゴリラを多く倒せるかという対決を始めたりして、半分地点まで来るのに昨日の2倍以上の時間が掛かった。
師匠、助けてください……。
俺にはこの2人の面倒は見れそうにありません。
好き勝手する2人に俺はもう心が折れそうです。
俺は今日まだ一度も戦闘をしていないのにすでに疲れ切っていた。
「レイクさん、分かっていませんね。私はアイランドゴリラ20匹とアイランドモンキー3体を倒しました。だから私の勝ちです。」
「意味がわからないよ!私はアイランドゴリラを21匹倒したよ!私の勝ちでしょ!」
疲れ切っている俺の横でレイクとパレットは何をしてるのかと思えばさっきのどちらがアイランドゴリラを多く倒せるか、という勝負の勝ち負けの言い争いをしていた。
「いいですか?アイランドゴリラはレイクさんの方が多く倒していましたが、私はアイランドモンキーも倒しました。アイランドモンキーは2匹でアイランドゴリラ1匹分です。なので私はレイクさんと比べると0.5アイランドゴリラ多いのです!」
パレットが謎理論を展開する。
それにアイランドモンキー2匹でアイランドゴリラ1匹分なんてルール初めからなかったでだろ。
「それもそうか……。」
何で納得するんだよ!
「納得してもらえましたか。私の勝ちですね。」
俺はパレットの勝ちではないことを知っているけど、指摘はしない。
指摘をしたらしたで絶対に疲れるからだ。
パレットの不正でレイクが負けてしまったがもうこれでいい。
「2人ともここから先が半分地点だ。ナメクジに十分注意していこう。」
「アオなんか疲れてない?」
「戦ってもないのにだらしない人ですね。」
誰のせいだ!
誰の!
「うげっ!何なんですか。あれは。」
パレットが巨大ナメクジを見て嫌そうな声を上げる。
「1匹で驚いてちゃダメだよ。この先、あのナメクジがわんさか出てくるからね!」
「わんさかですか……。そうですか。でしたら私の役目もここまでですね。」
パレットはそう言うと振り返って帰ろうと歩き始めたので俺はパレットの腕を掴んで逃がさないよにする。
「何してるんですか?離してください。」
「離さないぞ。パレットを呼んだのはあのナメクジを俺と一緒に倒してもらうためだからな。」
「レイクさんは?」
「私は素手だから……。ごめんね。」
レイクはパレットに謝る。
「だったら私も戦いません。嫌です。戦うことを断固拒否します。」
ここで俺は単純なパレットを戦わせることができるいい方法を思いつく。
俺は心の中でニヤリと笑う。
「いいか、パレットよく考えてみろ。レイクは戦えないモンスターとパレットは戦える。レイクが手も足も出せないモンスターと戦うことができるんだ。戦うことができるだけでもすごいのに、もし倒すことができたら?その先は言わないでも分かるな?」
パレットはゴクリとのどを鳴らす。
「私の方が強いという証明になる!?」
「パレットがさっきのズル勝ちで満足なら俺は帰ることを止めないけど?」
「私がいつ帰るって言いました?あんなナメクジ、私がけちょんけちょんにして見せます。」
「ズル勝ちだったの!?」
レイクが驚いているが今は無視をする。
途端にやる気を見せたパレットは巨大ナメクジと同じ位の大きさの熊を描いた。
その熊は青色で描かれていて刃物のような爪をしている。
「《お絵描き魔法・青》。くまさん、切り裂いちゃってください。」
パレットが描いた青色の熊はさっきの赤色のゴリラと比べるとスピードが段違いに早かった。
大きくても機敏に動く熊は巨大ナメクジが対応できないスピードでどんどん切り傷を増やしていく。
やがて切り傷まみれになった巨大ナメクジは倒れて、役目が終わった熊も絵の具に戻った。
パレットが巨大ナメクジをこうも簡単に倒せるとは……。
俺も戦うし、パレットも戦う。
これなら中央まで辿り着けるかもしれない。
「どうですか?」
パレットがドヤ顔で感想を求めてくる。
「正直驚いたよ。今はパレットを連れてきて心底よかったと思ってる。さっきまでは助っ人としてパレットを連れてきたのはもしかしたら間違いだったのではないかと思っていた俺を、俺は説教したい気分だ。」
「そんな人は私が説教してあげます。」
「パレット、これは勝負じゃないからね!勝ったなんて勘違いしないでよ!」
レイクが俺達の会話に割り込んでくる。
「そうですね。ナメクジに関しては勝負をしていませんから勝ったなんて思いません。」
そう言うパレットはニヤリと笑う。
この笑みは絶対勝ったと思ってるやつだ……。
「何その顔!絶対勝ったと思ってるでしょ!」
「別に思ってませんけど。元からこの顔です。」
「嘘だよ!さっきまでそんな顔してなかったもん!」
「いいえ。元からこの顔です。」
この2人は仲が良いのか悪いのか分からないな……。
師匠はよくこんなギルドのリーダーやっていますね……。
俺はそんなことを考えながら、レイクとパレットは口論しながら先に進むのだった。




