105話 僕が何をしたっていうの!
眠たい……。
いつも学校では眠たい僕だけど今日は特に眠たい。
昨日ゲームの中で化け物に追いかけられたせいで夜一睡もできなかった。
部屋の電気を消した後少し開いた扉が気になって閉めに行こうにも布団から出た瞬間に何かに襲われるんじゃないかと思って扉を閉める作業に1時間ほどかかったり、いつもは気にならない時計の音が頭に響いて離れなかったり、少しの物音に怯えたり、壁のシミがどんどん大きくなって顔に見える気がして布団の中に籠っているといつの間にか朝日が昇っていた。
僕は昇る朝日を見て布団から出て叫ぶ。
「勝ったぞーーー!」
何に勝ったのかは分からないけどこれは勝利なのだ!
すると苦労して閉めたはずの扉が勢いよく開かれる。
「お兄ちゃんうるさい!近所迷惑!」
僕の部屋に入ってきたのは化け物ではなく鬼の形相の妹の風香だった。
「ご、ごめん。」
僕が叫ぶのをやめ、素直に謝ると開いたとき以上の勢いで扉が閉められ風香は自室に帰っていった。
危ない、危ない。
風香だけは怒らせてはいけない。
風香は怒ると昨日の化け物以上に怖いからね。
本日最大のピンチをしのいだところで眠ろうとしたが謎にテンションが上がってしまって眠ることができなかった。
どうしよう……。
ここで僕は天才的アイデアを思いつく。
ここで勉強をしておけば学校で寝てもいいではないか!
ということで教科書とノートを開き勉強を始める。
「いつまでやってるの!早く準備しないと遅刻するよ!」
また扉が勢いよく開かれた。
「え!?」
時計を確認するといつもなら登校している時間になっていた。
今開いている教科書とノートを閉じて鞄に押し込む。
鞄を持って学校に行こうとしたところで風香に止められた。
「そのままの格好で行くつもり?」
「へ?」
部屋にある姿見の鏡で自分の格好を確認するとパジャマのまま学校へ登校しようとしている僕の姿が写っていた。
急いで着替えてリビングで母親からお弁当を受け取り走って学校へ向かう。
チャイムが鳴る中教室にたどり着きなんとか間に合った。
僕は席に着くと上がった息を整える。
先生が教室に入ってきて一日の始まりだ。
そして僕は力尽きて眠る。
頭を軽くたたかれて目を覚ます。
「風太君、朝から眠り続けているみたいですね。」
僕の目の前には困った顔をした高橋先生がいた。
「眠たい理由はなんとなく分かりますが他の先生に失礼ですよ。顔を洗って来るなり体を動かして眠気を覚ますなり、この休み時間になんとかしてきなさい。」
なんとなく分かるって……。
本当か?
でも、先生の顔を見ると本当に知っていそうで怖い。
先生に歯向かう度胸もないので先生の言った通りに校舎の中を散歩しに行く。
だらだら散歩をしているとそろそろ戻らないといけない時間だと気づく。
自分の教室から離れた位置まで来ていたので急いで教室に戻る。
階段を下っていると人とぶつかってしまった。
「わぁ!?ごめん!大丈夫?」
ぶつかったのはクラスでも人気者の泉さんだった。
そして泉さんが固まっている。
大変だ!
どこか怪我をしたのかもしれない!
どうしよう!
僕が頭の中でパニックになっていると泉さんが僕の顔を見て言う。
「大丈夫、大丈夫。私の方こそごめんね。」
大丈夫といっているがもし怪我をしていたら大変だ。
僕は手を差し出して泉さんを起こす。
彼女は小さな声で「ありがとう」と言うとすぐに階段を上がってどこかへ行ってしまった。
どこか痛めている様子もないし本当に大丈夫そうでよかった。
何故かずっと視線を感じる。
あの休み時間が終わってから誰かにずっと見られている気がする。
しかも視線は二つ感じる。
でもなぜ?
誰が?
一応寝たふりをして視線に気づいていないふりをしているけど気づかないわけないでしょ!
あわよくば寝てしまいたいけど視線が気になって眠気なんて皆無だよ!
少し顔を上げて誰に見られているのかを確認する。
視線なんて僕の気のせいならよかったがバッチリ僕の事を見ている人物を確認して再び寝たふりに戻る。
ど、ど、ど、どうして青人君と泉さんが僕を見てるの!?
すっごい見てたよ!?
僕、青人君と泉さんに何かした?
いや、泉さんはさっきぶつかったけど……。
僕は青人君に何したの!?
何かしたなら今すぐ謝るからそんなに見ないで!
そんな僕の願いも届くことは無く学校が終わるまで見続けられた。
そのせいで僕はずっと寝たふりをしながら気の休まらない時間を過ごした。
授業が全て終わり夕日の赤色が教室にも入ってくる。
そろそろみんな帰った頃かと思い顔を上げる。
何でまだ居るの……。
とっくに人がいなくなった教室には青人君と泉さんが残っていた。
僕は顔を上げてしまったのでもう寝たふりをすることも出来ない。
逃げようかと思い急いで鞄に荷物を詰めて帰る準備を始めると二人が僕に近づいてくる。
ご、ごめんなさい!
謝るから!
僕は心の中で叫ぶ。
謝るから何もしないでー!
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