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100話 実は怖い物が苦手だったりする! 

祝100話です!

 「化け物あいつらを殺せ!」

 キーラが化け物に指示を出す。

 「フータしかっりして!逃げるよ!あの化け物は倒せない!」

 一度あの化け物を見たことあるレイクがいち早く動き出す。

 「あ、ああ……。」

 未だ恐怖から抜け出せない僕は上手く歩く事が出来ない。

 ふらふらと足が上手く地に着かない。

 逃げたいのに足が上手く動かない。

 「おい!何をぼさっとしている!早くあいつらを殺すんだよ!さっさと行け!」

 化け物が動かなくてキーラが怒っている。

 再度指示を出すが動き出す様子はない。

 よくわからないけど化け物が動き出さない今のうちに大きく深呼吸をして冷静さを取り戻す。

 よし、もう大丈夫だ。

 冷静になったところで今どうするべきかを考える。

 「レイクはあの化け物を知っているんだよね?」

 「うん。前に遺跡の中で追いかけられた化け物のことは話したよね。今目の前にいるのはあの時いた化け物と一緒だよ。」

 「その時はどうやって倒したんだっけ?」

 「その時は遺跡の外の光に当たったら体が崩れて塵になったよ。多分日光とか強い光に当てれば倒せると思う。」

 なるほど。

 そうだとするとこのフィールドはこの化け物を生かすための空間ってことになるな。

 「確認だけど普通に攻撃して倒すことはできないんだよね?」

 「それは無理だと思う。今は分からないけど遺跡の中では何をしても無駄だったから。」

 このフィールドから出る事が出来れば化け物も追っては来れないと考えてよさそうだ。

 逆に言えば化け物がこのフィールドにいる限り無敵っていうことでもあるけどね。

 何を考えてるのか分からない化け物だけど今は主人の命令を無視して動かないでいてくれることがありがたい。

 「何で動かねえ!」

 キーラは怒り化け物を蹴る。

 キーラが蹴ると化け物がゆっくりと動き出した。

 それは僕達ではなくキーラに向かってだった。

 キーラが少しずつ後ろに下がるが化け物も一歩一歩キーラとの距離を詰める。

 「お、おい……。何してんだよ!お前の相手は俺じゃねえだろ!こっちに来るな!」

 キーラが必死に叫ぶが化け物は止まる気配がない。

 化け物と睨み合いつつ後ろに下がっていたキーラだったが何かにつまずいたのかしりもちをついてしまう。

 「来るな!来るなって言ってるのが聞こえねえのか!そ、そうだ!《使い魔・送還》!な、なんで戻らないんだよ!《使い魔・送還》!《使い魔・送還》!」

 何度もキーラがスキルを唱えるが化け物が送還される気配はない。

 キーラを追い詰めた化け物はニターっと笑いぐちゃぐちゃに曲がった腕を振り上げる。

 「それ以上リーダーを困らせないでくれるかなー。」

 いつの間にか化け物の後ろまで迫ったジャックが紫色の包丁を化け物に突き刺す。

 化け物は標的をジャックに変え腕を鞭のように振りジャックを攻撃する。

 ジャックはすれすれで躱し化け物を潜り抜けるとキーラを担いで走り出す。

 「しっかり掴まってろよリーダー。」

 キーラを抱えたジャックは何故かこちらに向かって来る。

 「何でこっちに来るんだよ!皆は知って逃げるよ!」 

 「おいおい、待ってくれよー。一緒に逃げようぜー。」

 ジャックはへらへらと笑いながら僕達を追う。

 化け物もジャックを追って走り出す。

 「どっか行けよ!こっちに来るなー!」

 「つれねーなー。『宝探しゲーム』の時また一緒に遊ぼうって言ったじゃねーかー。」

 「僕は嫌だって言ったはずだ!」

 「《常夜の国》」

 「あ!先生ずるい!一人だけ安全に逃げようとしてる!」 

 「ズルではありません。正当なスキル行使です。」

 しかし、空は赤いままで夜にはならない。

 「おや?発動しませんね。《常夜の国》。---やはり発動しませんね。仕方ないですね。このまま走って逃げましょう。」

 「そうだ!クロ、大きくなって皆を乗せて飛んで逃げてよ。」

 「兄貴、今の状況で大変言いずらいッスけど『宝探しゲーム』が終わってから大きくなれるのはブレスを吐く一瞬だけでその時以外は大きくなれなくなちゃったッス!それにブレスも一日に3回までという制限が付いたッス!」

 「なにーーーー!なんでそんな重要なこと今まで言わなかったの!」

 「忘れてったッス!」

 「忘れてったッスじゃないでしょ!とりあえずあんこは大きくなってきーこだけでも乗せて!」

 「分かりました!《巨大化》。きーこさん乗ってください!」

 「キュー!」 

 こんな状況でも楽しそうなきーこを見てこの子は将来大物になるぞと思う。

 きーこをあんこの上に乗せると、何故かクロとゆきが僕の上に乗ってきた。

 「疲れたから肩借りるわね。」

 「兄貴、俺も疲れてこれ以上飛べそうにないッス!頭の上でよ済ませて欲しいッス!」

 欲しいってもう僕の頭の上で休んでるよね!?

 「おい!キーラ!このフィールドを消すことはできないのか?」

 「無理だ!このフィールドは発動して一定時間経たないと解除されない!それも10分から1時間とランダムだからいつ切れるかも分からない!」

 「何でお前の王のスキルはそんな自分の思い通りにならないものばっかりなんだよ!」

 「うるさいな!それは俺にこのスキルを渡した胡散臭いおっさんに言え!」

 「言いたいけど、どうせもう消えてるだろ!」

 「その通りだ!」

 いつの間にか僕達と並走しているジャックに抱えられたキーラと言い合いになる。

 「二人とも仲良く話してるところ悪いけど化け物がもうそこまで迫ってるよ。」

 レイクに言われて後ろを確認すると残り5メートルくらいの距離まで化け物が迫ってきていた。

 「「近っ!」」

 「おこぼれ王子どうにかしろよ!」

 「私がどうにかしてみます。」

 どうにかすると言ったのはパレットだ。

 「どうにかってパレットどうするの?」

 「あなた達はただ見てればいいです。」

 そう言ったパレットは背負った筆を両手で持ち熊の絵を描き上げる。

 「《お絵描き魔法・黄》。くまさん頑張ってください。」

 「グァーーーーー!」

 絵だった熊が動き出し化け物に向かっていく。

 「負けてしまいました。」

 結果を言うと熊は化け物に一振りで倒され絵の具に戻ってしまった。

 「突っ立てないで逃げるぞ!」

 アオが突っ立ったままのパレットを抱えて逃げる。

 フィールドの切れ間まで残り100メートル程。

 このままでは追いつかれてしまう。

 「《森の目覚め》!」

 僕は自分たちの逃走経路の邪魔にならないように《森の目覚め》を発動する。

 先生の《常夜の国》は発動しなかったが僕の《森の目覚め》は問題なく発動した。

 「《植物操作》!」

 化け物の足が少しでも止まればいいと思い木の根を伸ばして化け物の行く手を阻むが化け物のスピードは全く落ちることは無い。

 「おこぼれ王子は使えねーなー。」

 担がれたキーラが言う。

 「誰のせいでこんな状況になってると思ってる!お前のせいだろうが!」

 「俺だけのせいにするなよ!俺だって使い魔があんな奴だって知らなかったしジャックも半分くらい悪いだろ!」

 「リーダーそりゃないぜー。」

 「ちょっと待て!使い魔を知らなかっただと!?何で事前に試しておかなかった!」

 「だって、胡散臭い元黄昏の王にいざという時まで呼び出すなって言われてたし……。」

 「フータやばいよ!追いつかれる!」

 化け物はもう手が届きそうな位置まで迫っていた。

 「しょうがねえなー!」

 べリアちゃんが振り返って立ち止まると拳に力を込める。

 「おらーーー!」

 べリアちゃんが化け物を殴り飛ばした。

 化け物は僕たちの後方に飛ばされ少し距離ができる。

 「「「おおーーー!」」」

 「あたいに感心してる場合じゃねえ!早く走れ!」

 べリアちゃんい感心していた僕とキーラとジャックだったがべリアちゃんの言葉で再び走り出す。

 フィールドの切れ間はすぐそこだ。


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