1話 異世界に生まれる
チュートリアル開始!
目を開けると、刺すような光が降り注ぐ。
次第に目が慣れてくると、刺激は祝福と満たされるような優しさへと変化する。
目の前には、少しやせ気味の女性が顔があった。額から頬から汗を垂らし、髪は濡れて肌に張り付いている。美人、というほどではないが、儚い雰囲気のそんな女性だった。
視界はまだはっきりせず、母らしき人以外の姿はぼやけたままとなっている。
俺は、生まれたんだろうか。
と、意識が覚醒した途端、激しい痛みが頭を襲う。
「おぎゃあああああおぎゃああああああ」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
うぐぐぐぐぐぐぐぅぅぅぅぅ!!!!
痛みに耐えようとしたものの、すぐに意識は闇へと落ちていった。
・・・
ゴワゴワとした肌ざわりと少し硬い地面の感触を感じ目を覚ます。
どこかの一室、薄暗い空間には窓から微かな明かりがさしている。
俺は一体どうなったんだ?
確か生まれたような・・・ハッ!?
頭痛は!?あの激痛は!??
・・・うん、よし、大丈夫そうだ。
あの時の激痛に警戒しながら体を起こし、何が起こったのかを考察する。
だんだんわかってきたぞ。
俺は確かにあの時生まれた。そして、覚醒した前世の記憶・意識が赤ん坊の俺にはとんでもない負担となった。だから一時的に意識をシャットダウンし、前世の記憶が受け入れられる状態になるのを待っていた。ってところだろうか。結局は、神のみぞ知る、みたいな感じだな。
でも、赤ん坊が泣く理由がその痛みとの闘いだとしたなら、それは少しロマンがあるのかもしれない。魂にはそういう情報がバックアップされていて、転生と同時に復元するかそのまま削除されるか。
ちなみに生まれてから今日まで(自分の意識がない間)の記憶はしっかりとある
「アルムー、起きてるー?朝ごはんよー?」
母さんが呼んでいる。
アルムとは俺の名前だ。聞いた話だと「ゴルゾム」と「アルン」でどちらの名前にするかで両親が揉めたらしい。それで両方を合わせたとかなんとか。
ゴルゾムじゃなくてよかった、と胸をなでおろしたのは良い思い出だ。
「ういー」
この世界、いや、このレスト村の朝は早い。前世の感覚だと午前4~5時くらいだろうか。早寝早起き、健康的で健全な生活だ。
俺は着替えを済まし、居間へと向かう。
「おはよう、アルム。今日は狩猟の日よね?たくさん食べて頑張ってきてね」
「パパが今日まで狩りとはなんたるかを仕込んだからな!余裕だろう!ガハハハ」
居間では父・ダンがテーブルでご飯を待っており、母・ケーラは朝ごはんをテーブルに並べている。我が家では、家族全員が揃ってからご飯を食べるルールがあるのだ。
「はは、ははは。頑張るよ・・」
今日は狩猟の日。つまりは、俺が初めて狩りに出る日である。
本来であればまだ5歳の俺が森へ入れるわけがないのだが、身体能力成長率アップの恩恵か、”一般的な成人男性”とまではいかないまでも、そこそこ頑丈さと筋力を身に着けていたため、父付き添いのもと狩りへ出る事を許されたのだ。
「しっかし、我が息子はなかなかの化け物っぷりだな!パパなんてお前ぐらいの頃は水汲みぐらいしかしてなかったぞ!」
「そうよねぇ。本当に自慢の息子だわ!」
「いいから早く食べようよ、冷めちゃうよ?」
本当はチートなんですごめんなさい。などと言えるわけもなく・・・。
「そうだな!では、頂きます!」
「頂きます!」
命に感謝し、朝食を頂く。
今日は硬めのパン、豆のスープと猪肉と野菜の炒め物だ。豆のスープは母の強い拘りで、野菜クズから出汁をとっており、薄味でも満足感のある味わいとなっている。猪肉の方は父が狩ってきたものを使い、野菜と共に炒めたシンプルなものだ。
両親いわく身体は”肉が作り、野菜が保つ”らしい。そのどちらも実感できなかった前世からすると、チートがあるとはいえとても喜ばしい結果だった。
一日が30時間くらいになっててくれればもっと各時間があるのに・・・
いや、仕事の時間も伸びて結局変わらなくなるのかな・・・
あぁ・・・誰か良い胃薬を教えてください・・・