6話 温泉と姉弟
畑仕事を終え温泉へと向かう。
どうやらメロナとリトも一緒に来るようだ。
「もう!アルムのエッチ!」
「一緒に行くって言ったのはお姉ちゃんだよ・・?」
と、俺に変わってリトが反論してくれた。
「うるさい!ほら早く行くの!」
何故か逆ギレされている。
・・・
温泉は村の北西、畑の西側に位置している。
完全に露天風呂で、近くに脱衣所を兼ねた小屋があるくらいだ。
一応、温泉の周りに覗き防止の柵はあるがはっきり言って覗きし放題だと思う。今度覗いてみよう。
前世の癖で、かけ湯を終えてから、温泉に浸かる。
続いて後ろからメロナとリトが入ってきた。
「ちょっとこっと見ないでよ!」
「ガキの裸なんて見たってなんとも思わねーよ、気にすんな」
「こっちが気になるんでしょうが!」
「はぁ~・・・お姉ちゃんもうちょっと落ち着こうよ~」
などと他愛ないやりとりをしつつ温泉を満喫する。
やっぱりお風呂っていいな・・・元日本人としてこれがない生活は堪えられないかもしれないな。冒険者になったら風呂なんてそうそう入れないんだろうなぁ・・・。
「あ、そうだ。私、明日からケーラさんに魔法教えてもらえるんだ!いいでしょ!」
ふふん、とない胸を張るメリナ。
「へぇ~」
「ちょっとは驚きなさいよね・・・。ところで、アルムは魔法覚えないの?」
「俺、魔法にも魔術にも適性ないみたいなんだよね。だから教えて貰ってないんだよ」
そう、俺は魔力がうまく扱えないのだ。なぜ使えないのかはわからないが、簡単な魔法も魔術も発動出来なかったのである。
「ま、まぁ話聞くだけでもためになるでしょ?一緒に勉強しようよ!」
「う~んそうだなぁ・・・。考えておくよ」
「ねぇ、お姉ちゃんってもしかしてアルム兄ちゃんが好きなのー?」
唐突に爆弾が炸裂した。
「えっ」「はっ!?」
「だっていっつもちょっかいかけてるし、いっつも一緒にいたがるしー?」
「好きなわけないじゃない!馬鹿リト!殴るわよ!」
そうだった、リトはいつも爆弾を投下するんだ。
これ以上ここにいるのは危険だから上がることにしよう。
そうしよう。
「のぼせそうだからもう上がるわー」
「ちょ、ちょっと待ちなさい!私も上がるわよ!」
「ほらほらそういうとこ~」
「うるさい!」
しかし仲が良い姉弟である。
兄弟、かぁ。俺も欲しかったなぁ・・・。弟か兄なら切磋琢磨できそうだし、妹なら「お兄ちゃん!」って呼んでもらえるし、姉だったら・・・うーん?うーん・・・。
親父も母さんもまだ若いから可能性はある・・・はず!
よし、それに期待しよう。
「何ボーっとしてるの?」
着替えを済ませたメロナとリトが小屋から出てくる。
「兄か弟か妹が欲しいなぁ~って思ってさ」
「姉は?」
「リトを見てると大変そうだなぁって・・・」
「は?どういう意味!?」
「あはははは」
リトが腹をかかえて笑い出す。
「なんで笑ってるの!?」
ペシッという音がリトの頭で鳴る。
「痛ッ!」
「ほら、そろそろ行くぞ?」
「まったく!まったく!!」
「あはははっはは」
こうして賑やかな三人は広場へと戻っていくのだった。
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