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455 空色 そらいろ その恋は、空の色をしていた。

 懐かしい(あなたへの)紙ヒコーキの手紙。


 空色 そらいろ


 その恋は、空の色をしていた。


「お邪魔します」

 小瀬蓬くんと仲良くなった日向明里は蓬くんのご両親の許可をもらって、蓬くんの部屋に度々(課題がいっぱいでる、難しい大学の授業の終わりに)遊びにくるようになった。(遊びにくると言っても二人は勉強ばかりしていたけど……。楽しかった)

 いつものように明里が蓬くんの部屋の中に入るとそこに蓬くんの姿はなかった。部屋の中はもぬけの殻だった。(蓬くんのお母さんに聞いて、出かけていると聞いていたけど、蓬くんのいない蓬くんの部屋に一人ではいるのは、今日が初めてだった。なのでなんだか緊張する)

 だけど窓は開けっ放し。

 そこから青色の空と夏の大きな白い雲のある風景が見えた。……やさしい(ちょっと蒸し暑いけど)夏の風が白いカーテンを揺らしている。明里は部屋の中を移動して、その窓をそっと閉めようとした。

 その途中で、明里は一人で、少しだけ蓬くんの部屋の中の風景を(いつもよりもきちんと)見渡した。

 綺麗に掃除がされて、きちんと整頓された、ものの少ない部屋だった。

 蓬くんの机の上には、小さな黄色い飛行機のおもちゃが置いてある。その横には飛行機とか、飛行機の操縦士の本。それから空や航空力学に関する科学雑誌が置いてある。(今月号だ。風にページがゆっくりとめくれている)

 それらの忘れ物(きっと忘れ物だ)を見て、明里は一人、くすっと小さく笑った。(蓬くんは空とか、飛行機のことが大好きだった。きっと慌てていて、外に出かけるときに、もっていくのを忘れてしまったのだろう)

「いい風」

 明里は言った。

 明里は蓬くんの部屋の窓を閉めようと思ったけど、やっぱり開けたままにしておくことにした。

 ちょうど空を見たいと思っていたから、それはすごく良いタイミングだった。


 空色 そらいろ 終わり


 君とはじめて手をつないで、ふわふわと桜の花びらの舞う春の風の吹く坂道を走る。(全編) 終わり

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