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 欅荘には部屋にお風呂がついていた。しかし欅女学校の敷地内にはなんと大きな入浴場があったので、時間がないとき以外はみんな入浴場でお風呂に入った。

「気持ちいい。生き返る」

 ふーと息を吐きながら花は言った。

「なに言ってるの? 花は最近ごろごろばっかりしてるでしょ?」と福が言った。

 福は今、自分の髪を洗っている。「ちゃんと勉強はしてるよ」と一足先に体を洗い終わって湯船に浸かっている花は言う。花は今学期も学校で一番の成績だった。(それどころか全国でも一番が狙えるくらいにいい点数をとった。先生たちはみんな本当に喜んでくれた)

「あの、大葉先輩。少しだけお話しさせていただいてもいいですか?」と少し遠くにいた後輩の欅の生徒の二人組の一人がやってきて花に言った。

「うん。別にいいよ」と花は言った。

「野山先輩。すみません。少しだけ大葉先輩をお借りします」と後輩の(すごく可愛い子だった)生徒は言った。

「ちゃんと返してよ」と笑いながら福は言った。

 花は湯船から出ると後輩の女の子と一緒に待っているもう一人の後輩のところまで歩いて行った。(その待っている女の子もすごく可愛い子だった)二人の後輩を見て、当分、花は戻ってこないなと福は思った。

 福は髪を洗っていた泡をお湯で流して、体を洗ってから、湯船に浸かった。少し向こうではきゃーきゃーという楽しそうな声が聞こえる。きっと花が後輩の女の子にちょっかいを出しているのだろうと福は思った。花が戻ってくると福は「浮気者」と花に言った。花はだらしない顔をしながら「ごめん。福ちゃん」と福に言った。

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