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「お嬢様の部屋って言っても別に普通なんだね」革靴を持ちながら珍しいものでも見るようにきょろきょろと花と福の部屋を見ながら朝は言った。

 朝に悪気がないことはわかっている。ただ子供なだけなのだ。

「とりあえず座って。あと体冷えてると思うからあったかくして」と顔を真っ赤にしている花は(大きめのタオルを朝に渡しながら)鼻をすすりながら言う。

「花こそほら。横になって。僕のことはお構いなく」と優しい顔で笑いながら朝は言った。

 お構いなく、じゃないでしょ、とぼんやりする頭の中で思いながら花はおとなしくベットの中に戻って横になった。(熱がなかったからたぶん蹴っているなと花は思った)

 朝は花にもらったタオルで頭を拭いている。そこにはさっきまで少し雪が積もっていた。

「あとで福ちゃんに謝らなくちゃ」花は言う。

「それなら大丈夫だよ。僕を案内してくれたのは野山先輩だから」と朝は言う。

「え!? そうなの?」驚いて花は言う。そんな花の顔を見ながら、「花。可愛いパジャマ着てるんだね。ちょっと子供っぽいけど、よく似合ってる」と朝は言った。

 その瞬間、枕が朝の顔に飛んできた。

「なんだ。悪戯の犯人は福ちゃんか」と花は言う。

「うん。そうだよ。電話かかってきた。元気ずけてあげてって」背負っていたリックから青色のエプロンを出してそれをつけた制服姿の朝は台所に立つと料理を始める。花は勉強はできるけど料理は全然できない。朝は勉強があんまりよくできないけど料理はすごく上手だった。

「おかゆでいい? それにしても冷蔵庫の中。なんにもないね」と朝は言う。ちなみに福も料理は全然できない。普段二人は寮の食堂で食事をしている。

「ありがとう」と子供っぽい声で花は言った。

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