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人生嫌なことばっかりだな。と花は思った。
つまらないし退屈だし、面白いことはなにもないし、将来の夢もない。私はなんのために生きているんだろう? なんのために勉強しているんだろう?
……私はどうしてここにいるんだろう?
そんなことをひとりぼっちの部屋の中で、天井を見ながら花は考えている。
熱があるから、こんなことを考えるのかな? 私は今のとても弱っている。まずいな。はぁー。
花は嫌なことを忘れるために無理やりに目をつぶって眠りにつこうとする。でもそのとき、こんこんと誰かが小さく窓を叩く音がした。
なんだろう? 花は思う。
花はじっと頭だけを横に動かして白い厚めのカーテンのかかっている窓を見る。
「……花。起きてる」
その声を聞いて花は思わずベットの上に(上半身だけ)飛び起きた。
「もしかして、朝?」
窓のところまで歩いてから花は小さな声で言う。
「そうだよ」と朝が言う。
その声を聞いて、そうだよ、じゃないでしょ、と花は思った。
なにを呑気にそんだよって、しかも少し嬉しそうな声で言っているんだろう? 馬鹿なんじゃないのか? と花は思う。怒ると言うよりも呆れてしまった。
花は無言のまま白いカーテンを開けて、窓を開ける。するとそこには朝がいた。小竹朝。花の一つ年下の男子高校生。朝は寒そうに手をこすりながら、花の顔を見ると「よかった。思ったよりも元気そうじゃん」とにっこりと笑ってそう言った。
花は白い息を吐いている朝を見ながら「とりあえず中に入って」と朝に言ってから窓の外をきょろきょろと見渡してから、朝を自分と福の暮らしている部屋の中に入れた。
「お邪魔します」と朝は言った。




