313 菘 すずな 私は、ただの可愛い後輩ですか?
菘 すずな
七月。
私は、ただの可愛い後輩ですか?
「おっす。先輩。おはようございます!」
椎名はちが一人で高校の廊下を歩いていると、後ろからそんな風にして、誰かに肩を軽く叩かれながら、声をかけられた。
はちはゆっくりと後ろを向く。(まあ、そんなことをする奴は一人くらいしか思いつかないので、だいたいは振り向く前から予想はついていたのだけど……)
するとそこには、はちの一個下の後輩の高校一年生の女子生徒、松野菘がにっこりとした笑顔で立っていた。
「どうしたんですか、先輩? 朝から元気ないですね」
とはちの横に移動しながら、菘は言う。
「お前が元気すぎるんだよ」
はちは言う。
「まあ、私は元気だけが取り柄ですから」
明るい笑顔で笑って菘は言う。
いつも明るくて元気な菘は、裏表のない性格をしていて、誰とでもすぐに仲良くなれるような、そんな(あまり他人と喋らない、一人が好きで、いわゆる暗い性格をした)はちとは正反対の性格をした女子生徒だった。
「先輩。今日、放課後部活でますか?」
菘は言う。
「出るよ。暇だし」あくびをしながらはちは言う。
「先輩でるんだ。じゃあ私も部活に出ようかな?」少し考えるような素振りをして菘は言う。




