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 朝ご飯を食べている間に、若竹姫はいつもの若竹姫に戻っていた。

 とっても美味しい朝ご飯を食べながら、若竹姫は大丈夫。白藤の宮が大丈夫だといっているのだから、……、きっと、大丈夫なのだ、と思った。

「さて、ご飯もいっぱい食べましたし、これから畑仕事をしましょう」

 ふふっととても楽しそうに少しだけいじわるな顔で笑いながら、(お腹もすいていたし、すごく美味しかったから)ご飯をお代わりまでした若竹姫を見て、白藤の宮は言った。(若竹姫は恥ずかしそうに、その綺麗な顔をほんのりと赤い色に染めた)

「畑仕事ですか?」

 綺麗に空っぽになった食器を台所で洗いながら、若竹姫は言った。

 朝ごはんに使った食器はすべて漆塗りの高価なものばかりで、白藤の宮の食器には金箔の鶴の絵が、若竹姫の使った食器には亀の模様が入っていた。(都で暮らしていたときから、ずっと白藤の宮が使っていた食器のようだった。『あるお人』からいただいたとても大切なものらしい)

「そうですよ。まさか、ただで美味しいご飯が食べられるとは思っていませんでしたよね。若竹姫」

 と、若竹姫を見て、にっこりと笑って白藤の宮はいう。

 そんな白藤の宮を見て若竹姫は、「はい、もちろん。ちゃんと食べたぶんは、働きます」と小さく笑ってそう答えた。

 それから二人はお互いの顔を見ながら声を出して笑い合った。(そんな二人の姿はまるで、本当の親子のようだった)


 畑仕事をするために一度、着替えをした二人は鳥の巣の外に出た。

 白藤の宮は頭に白い頭巾を巻いて、同じように白い襷を上半身に巻いて、着物は薄い紫の着物を着ていた。

 若竹姫は白藤の宮に用意してもらった鮮やかな緑色の着物に着替えをした。頭には紺色の頭巾を巻いて、同じように紺色をした襷を上半身に巻いていた。

 それらは普段から畑仕事につかってる着物らしくて、どちらも少し古い着物のようだった。(それでも、よく手入れのされている綺麗な着物だったけど)

 外は、晴れ渡っていて、とても明るくて良いお天気だった。

 古い森の中に、気持ちのいい穏やかな風が吹いている。

 青色の空の中には、眩しい太陽が輝いていた。

 そんな美しい風景の空を、鳥の巣の外に出た若竹姫はしばらくの間、一人でぼんやりとただ、なんだかうっとりするような目で、眺めていた。

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