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 それは本当に立派なお魚(鮮やかな橙色をした大きな鯛)だった。

 そのお魚を見て、(川魚だとばかり思っていた)若竹姫は目を丸くして本当に驚いた。(……、いったい、こんな森の奥で、どうやってこんなに立派で新鮮な鯛を白藤の宮は手に入れたのだろう? それがとても不思議だった)

「ふふ。どうです? すごいでしょ?」

 大きな(きらきらと橙色の鱗が光っている)鯛を両手に持って若竹姫に見せながら、(うきうきと体を動かしながら)にっこりと笑って白藤の宮はいう。

 どうやら白藤の宮はこの立派な鯛のお魚を見せて、若竹姫を驚かせようと初めから思っていたようだ。

 自分の思い通りに(いつも無表情の、あまり自分の感情を顔に出さない)若竹姫が可愛らしい目を丸くして驚いているので、白藤の宮はとても満足したような顔をしている。(いたずらが大成功したときの子供のような顔だった)

「こんな立派なお魚、どうやって手に入れたんですか?」

 と驚いた顔のまま、若竹姫は白藤の宮の顔を見て、言う。

「それは秘密です。私にはあなたの知らない秘密が、まだまだたくさんあるんですよ。本当にたくさんね」とえへんと自慢げな顔をして、真っ白な割烹着姿の白藤の宮は(まだ驚いている)若竹姫に言った。(今回の勝負はたしかに私の負けだと若竹姫は思った。だって、海はここから本当に、遠い、遠いところにあるのだから)

 二人は鳥の巣の小さな(清潔で物の少ない、きちんと整理された)台所に立っている。

 白藤の宮も若竹姫も白い割烹着を着て、頭に白い頭巾をかぶって、料理をする支度をすでに整えていた。(若竹姫がきている白い割烹着はもちろん、白藤の宮のものだった)

 二人は桶の中にある透明な水で手を洗い、早速お食事の支度に取り掛かった。

 それから白藤の宮は料理がまったくできないと思っていた(実際に子供のころの若竹姫は料理やお掃除や洗濯などが苦手だった)若竹姫が意外なほど、(料理の知識や経験も含めて)料理の手際がいいことに驚いて、てきぱきと手を動かし続ける若竹姫を驚いた顔をして、まじまじと見つめた。

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