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 冬の夜空には三日月があり、その三日月を帰りの車の中で真由子はずっと見つめていた。

「本当に、よろしんですか?」

 珍しく、熟練の運転手さんが真由子にそんなことを尋ねた。

 小鹿と真由子の車のところでのお別れのやり取りを通じて、運転手さんには真由子が小鹿のプロポーズを受け入れたことが伝わっていた。

「はい。いいんです」真由子は言った。

「心配していただいて、ありがとうございます」真由子は言う。

「大変失礼いたしました。真由子お嬢様」

 運転手さんはそう言った。

 それからいつものように、運転手さんは真由子が話しかけない限り、ずっと黙ったままだった。


 真由子と小鹿の結婚式はそれからすぐに日取りが決まって、約半年後に行われた。

 真由子は神前式を希望したので、東京にある大きな神社の中で、二人の結婚式は行われることになった。

 その結婚式には生徒会メンバーの友人たちも出席してくれた。

 みんなの中で結婚は真由子が一番乗りだった。

 真由子はそれから小鹿さんの所有する六本木にあるとても巨大で高級な高層マンションの最上階のフロアで暮らすようになった。

 赤坂にある古風な作りの小島の家とは勝手が違ったが、その生活は新鮮ですごく楽しかった。

 真由子は専業主婦になり、小鹿のプイラベートな部分を彼の大切なパートナーとして支えることになった。

 子供はすぐに欲しかったのだけど、まだ神様から授かってはいなかった。


 その日、真由子は買い物をするためにマンションを出て、六本木の街の中を歩いていた。

 その日は春の暖かな日で、風がすごく気持ちがよくて、真由子は近くに咲いていた桜の木や舞い散る花びらに誘われるようにして、少し遠くまで散歩をしよう、という気分になった。

 そして真由子は四ツ谷の方向に向かって、東京の街の中を歩き始めた。

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