表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

144/452

221

 明里はゆっくりと橋の上を渡り始めた。

 彼は橋のちょうど真ん中のところにいた。

 明里がその近くまで行くと、彼は明里の存在に気がついて、その顔を空から明里のほうに向けた。

 あたりはだいぶ暗くなっていたが、天橋には照明が灯されているので、お互いの顔はよく見えた。

 彼は、明里を見て、なんだかとても驚いた顔をした。

 それから彼は「……すみません」と小さな声でつぶやいて、明里とは反対側の橋の出口に向かって、移動しようとした。

「あ、あの!」

 明里はそう言って彼を呼び止めた。

 すると、彼はその場に立ち止まって、ゆっくりと明里のほうを振り返った。

 明里は、彼の前まで橋の上を移動した。

 彼と出会ったら、いろんなことを話そうと思っていたのに、なかなか言葉が出なかった。

 でも彼はじっと明里のことを見て、明里の言葉を待っていてくれていた。

 明里はそれが嬉しかった。

 なんだか勇気をもらえた気がした。

「……あの、こんなこと言うと、変だと思われるかもしれませんけど、実は私、一度あなたにお会いしたことがあるんです」下を向きながら明里は言った。

「それで、そのときからずっと、実は私は、……あなたのことを探していて」

「横断歩道のところでしょ?」

「え?」

 彼の声を聞いて、明里は思わず顔をあげる。

「少し向こうにある、十字架の形をしたでっかい横断歩道のところ。出会ったのは、今年の四月ごろ」

 彼は言う。

 明里はなんだか、またなにがなにやら、頭の中が混乱してよくわからなくなってきてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ