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「やっと、しっかりと私のこと、見てくれたね」嬉しそうな顔で椛は言った。

 小春は確かにこのとき、ようやくしっかりと山里椛という女の人のことを見ることができるようになった。

 椛はとても気さくて、人懐っこくて、明るくて、引っ込み思案な小春でも、こうして一目で好感を感じてしまうような、そんな気持ちの良い性格をした女の人だった。

「つまりね、私がいいたいことはね、私は別に優の恋人ではないし、優は今別にほかの誰とも付き合ってなんていないってことなの」

「え?」小春は言う。

「それがどうしても、私が高松さんに伝えたかったことなの。もちろん、嘘じゃないよ」椛は言う。

 

 それから少し間をおいて、ようやく小春は、あらゆる出来事が、すべて自分の勘違いから発生しているのだと言うことに気がついて、本当に、死にたくなるくらいに、恥ずかしい思いをした。

 自体を把握して、顔を真っ赤にしている小春のことを見て、椛はすごくおかしそうな声で、笑っていた。

「笑わないでください!」小春は言った。

「ごめんなさい」と椛は言ったが、その笑いはもうしばらくの間は、止まることがなかった。それから、両者とも落ち着いたところで、また椛が話を続けた。

「さっき、少しだけ高松さんたちの事情を四ツ谷さんから聞いたんだけどね、実は私も四ツ谷さんと同じような理由で、今日、あの図書館にやってきたんだ」と椛は言った。

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