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 同じように卒業証書を手に持っている制服姿の絵里を見て、「それで、用事ってなんだよ?」と忍は言った。

「話したいことがあるんだよ」絵里は言う。

 それで忍はある程度、絵里の用事に察しがついたようだった。

 二人の少し離れたところには、真冬と芽衣がいた。二人はそれぞれの両親と一緒に、六人で楽しそうになにかの話をしていた。

 絵里と忍が二人に目を向けていることに、気がつくと、二人は笑顔で、絵里と忍に手を振ってくれた。

「それで、真冬のことはいいのかよ?」二人に手を振りながら忍は言う。

「森野って、いつもそればっかりだよね」と、同じように二人に手を振りながら絵里は言う。

 絵里と忍はそれから校門の近くにある、周りの銀杏並木の木の中でも、少し大きな銀杏の下に移動した。

 その移動の途中で、「絵里ー! あとで連絡するね。それから、森野くん! さよなら。また、どっかで会おうね!」と走りながら恵がそんなことを二人に言った。恵は絵里のあまり知らない、大人しそうな感じのする顔をした女子生徒の元に向かって走っていた。

「恵! またね!」

「おう! じゃあな、四ツ谷! どっかで会ったらよろしく!」

 二人は恵にそんな挨拶を返した。


 そして二人だけになった絵里は忍に「森野くん。好きです。私と付き合ってください」と愛の告白をした。

 忍は、「……こちらこそ、好きです。山吹さん。これからも、ずっとよろしくお願いします」と言って、絵里の告白を受けいれてくれた。

 もう忍は絵里に、「真冬のことはいいのかよ?」とは言わなかった。


 二人はお互いの両親のところに行って、それからふた家族一緒に、卒業のお祝いとしてお好み焼きを食べに近所のお好み屋さんに行った。

 そのとき食べたお好み焼きはすごく美味しくて、それから、なんだかとても、懐かしい味がした。

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