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それはいつもの忍の顔だった。
そこには確かにいつもの、絵里の知っている忍がいた。
絵里はその顔を見て、なんだかすごくほっとした。
このまま私と、真冬と、そして忍との三人の関係がバラバラに壊れていってしまうのではないかと、そんなことを絵里はずっと夏休みの間中、恐れていたのだった。
「まあ、そうだよな。お前はそういうやつだよ」
忍は窓際に移動する。
窓は空いていて、そこから部屋の中に入っていくる秋の風が白いカーテンと忍の髪を揺らしている。
「ごめんなさい」絵里は言う。
絵里は本当に忍に申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
「それでどうするんだ? 真冬が早乙女と別れるのを待つのか? 俺が見た限りだと、そんなことにはならないように思えるけどさ」忍は言う。
「うん」絵里は言う。
忍の意見には絵里も同意見だった。
「このまま真冬の友達のままで、これからもずっと、今までみたいに三人で過ごしていくのか?」
「……できれば」と絵里は答える。
「それにお前は耐えられるのか?」
絵里は答えない。
でも、その自信はあまりなかった。
絵里は真冬が好きだった。でも、忍のことだって大切だし、芽衣のことだって大切だった。みんな大切。だからみんなと仲良くしたい。でも、私は真冬が好き。真冬は芽衣のことが好きで、芽衣も真冬が好き。それで忍は私のことが好き。
……なんだか、すごく複雑だった。
絵里はともかく、今のままの関係を維持したいだけなのに、それをすることがうまくできなかった。
絵里はそんなことを忍に言った。
すると忍は、「まずお前は自分のことを一番に大切にしろよ」と絵里に言った。
それから忍は「またな」と言って図書室を出て行ってしまった。
部屋の中には秋風と、それから絵里一人が残された。




