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結局、夏のお祭りには、絵里は忍と二人で行くことになった。
真冬は芽衣と二人でお祭りに行くと絵里に言った。
絵里は二人の姿を想像してみた。
悔しいけど、学校にいるときのように、お祭りでも、二人はすごくお似合いだった。
「お待たせ」
少し早い時間に待ち合わせ場所の駅前に絵里は行ったのだけど、そこにはすでに森野忍の姿があった。
「おう」
と片手をあげて忍が行った。
忍は紺色の男性用の浴衣を着ていた。その浴衣を見て、「似合ってるじゃん」と絵里は言った。
絵里は黄色い帯で締めた、茜色の浴衣を着ていた。それは本来なら絵里の勝負服となるはずの、気合を入れて選んだ絵里お気に入りの浴衣だった。
夏のお祭りにはすごくたくさんの人たちがいた。
二人はその流れの中を一緒に歩くために、自然と中で手をつないだ。はじめに絵里の手を握ったのは忍だった。
「あ」
忍に手を握られて絵里は思わずそんな声を出してしまった。
「ほら、早く行くぞ。遅れるなよ」前を見ながら忍が言った。
……なんだか、すごく恥ずかしかった。
そういえば、思い返してみると、私はこうして忍と手をつないだすることは、本当に小さいころを除けば、今日がはじめてなんじゃないかと絵里は思った。




