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毎日が南の島の夏休み  作者: ロッドユール
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行く先

「ところで、どこへ行くの?おねえちゃん」

「ただ進むのよ」

「方角は?」

「南」

「南?」

「南よ。まっすぐ南。南のど真ん中へ行くわ」

「でも夏よ」

「夏だからよ」

「う~ん、複雑だわ」

 幸子は、夏菜の考えが分からず、くらくらとその丸い頭を両手で抱えた。

「私に暑いって言わせてやるの。この夏に」

「ますます複雑だわ」

「そして、南の島の離れ小島のヤシの木にハンモックを吊るして、そこに思いっきり横になって、フルーツを齧るの」

「あ、それは分かる」

 真っ白で大きな雲の下を、スバル55は南に向け、どこか陽気にステップを踏むように走って行く。

 スバル55は、いつしか街を抜け、広い一本道に出た。

「お姉ちゃん免許あるの」

 その時、ふと幸子が夏菜に訊いた。

「まさか。私は十五よ」

「大丈夫?」

「スバル55に免許なんていらないわ」

 するとそこに白バイが一台、猛烈に真っ赤なサイレンを鳴らしながらものすごいスピードで、後ろからやって来た。

「わっ、警察だわ」

 幸子が叫んだ。幸子は心配そうに、夏菜を見る。しかし、夏菜は涼しげな顔で、そのまま軽やかにスバル55を運転している。

 白バイはスバル55の走っているすぐ横までやってくると、サイレンを消し、その横を並走しながら、運転席を覗き込んだ。そして、白バイ隊員は、スバル55の運転席の小さな窓をコンコンと軽く叩いた。夏菜はスバル55の窓を、手動レバーをクルクル回し全開にした。

「こんにちは」

 白バイ隊員は、バカでかいサングラスの下に真っ白い歯を浮かべた。

「こんにちは」

 夏菜も笑顔で答える。

「お嬢さん」

「はい、なんでしょう」

 白バイ隊員は、夏菜のその端正な顔を見つめた。

「素晴らしい車だね」

「ありがとう」

「僕は子どもの頃からスバル55が大好きなんだ」

「私もよ」

「それを言いたかったんだ」

 それだけ言って、白バイ隊員は二人に笑顔で手を振ると、そのまま走り去って行った。

「ほらね」

「ほんとだ」

 スバル55はどこかご機嫌で走って行く。

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