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毎日が南の島の夏休み  作者: ロッドユール
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アイスクリーム

「おねえちゃんクーラーいれて」

「そんな素敵なものはないわ」

 夏菜はあっさりと否定した。

 幸子は手動レバーをクルクル回して、スバル55の窓を目いっぱい開けた。

「気持ち良い~」

 幸子は全開に開け放たれたスバル55の小さな窓から吹き込む風に、その小さいまん丸な顔を当てる。

 スバル55は、気持ちの良い夏の風を切って、煌めくような夏の輝きの中を走って行く。空には大きなわた雲がほわほわと流れている。

「旅の最初はアイスクリームから始まるのが素敵だわ」

 夏菜が言った。

「うん、アイス食べた~い」

 幸子も大賛成だった。

「我ながら良いアイデアだわ」

 夏菜はバカでかいサングラスをキラリと光らせ、一人ちょっと得意になった。ちょうどそこに路上アイスクリーム屋さんが、その大きな木製のカラフルな屋台を路上脇に横付けしているのが見えた。

「スペシャルミックス二つね」

 夏菜がその路上アイスクリーム屋さんの隣りにスバル55をつけると、その小さな窓から顔を少し出した。

「はい、お待たせ」

 すると直ぐに路上アイスクリーム屋のおじさんは、にこにことジャムおじさんみたいなその真ん丸の顔をほころばせて、二人の顔よりも大きな特大のスペシャルミックスアイスを夏菜に手渡した。

「特別の特別ミックスだよ」

「ありがとう」

 夏菜がそれを両手で受け取ると、幸子を見た。

「私が出すの?」

「もちろん」

 特大のアイスクリームとそれを持つ二人の女の子を乗せ、スバル55は再び走り出した。

「しあわせ~」

 スペシャルミックスの一番上に乗っているチョコチップの散りばめられたペパーミントストロベリーアイスを、その小さな口で一生懸命齧りながら幸子が笑顔で言った。

「やっぱり夏の旅の始まりはアイスだわ」

 夏菜も、なぜか三段目のメロンアイスを横からかじりながら満足げに言った。

「でも、早速お金が無くなったわ」

 幸子が夏菜を見る。

「お金なんか、たいした問題じゃないわ」

 夏菜はスバル55を運転しながら、器用に何段にも積み重なった巨大なスペシャルミックスアイスを横から大口を開けてかじっていく。

「だって、夏なんですもの」

「そうだね」

「それにこんなかわいい女の子が二人もいるのよ」

「うん」

 スバル55は真っ青な夏空の下、プスプスとその小さな車体を揺らしながら、まだ見ぬその先へと軽快に走って行った。


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