惨状
「早く!こっちへ!」
「ここはもう限界だ。早くあっちへ逃げ。うっ…」
最後の戦士の体が槍が貫かれ、血しぶきを上げる。そのまま、槍が横にずれ体が引き裂かれた。あたりには似たような姿の肉片が散らばっている。
「男は全て殺せ。女子供は攫え!良い肉がとれる!」
同時刻。同村にて。
「ここに隠れて!絶対出ちゃダメよ。あなたには人類を救う力がある。」
「おかあさ!」
バタン!
その女性は地下の食料庫に自身の子供を押し込み、そこを去った。
「まだ、一人いやがったか!」
「いやぁぁぁ!」
最後の女性が連れて行かれた。こうしてこの村にはその少女を残し誰一人いなくなった。
現在、西暦4252年。遺伝子組み換え食品が本格導入されてから2000年。
徐々に進んできた、地球温暖化によりたくさんの動植物が死に絶えた。人類は地球の食物連鎖を崩さないために、遺伝子組み換え動植物(GMAP)を培養、栽培し、地球上に解き放った。しかし、根本的な解決にはならず、遂に11年前、天然の動植物は人類を残し全て絶滅した。
また、人間も着々と数を減らし現在、全世界の人口は5億人を切ったとされている。
ただ、人類に関してはたった10年前までは地上にまだ96億人存在した。この数の減り方は異常だ。
別に食糧不足で争ったわけでも、核戦争が勃発したわけでもなち。理由は簡単。人間は遂に食物連鎖の頂点の座を引きずり下ろされたのだ。
遺伝子組み換え動植物は、人体には何の影響も及ぼさなかった。しかし、それはあくまで人体の話。他の遺伝子組み替え動物達(GMA)には多大な影響を与えた。多くの組み替え動物は遺伝子組み換え動植物(GMAP)を口し続けると成長速度と突然変異を授かるかわりに数年で死ぬ。だが、これが最悪の結果を招いた。
生物は親から子へ遺伝子が伝達される際のエラーを次世代に受け継ぐことで進化する。つまり、世代が長く続けば続くほど進化する可能性が高くなる。
その結果、遺伝子組み替え動物(GMA)は進化した肉体と知能を手に入れた。
そして、遂に知ってしまったのだ。
自分達は遺伝子組み換え動植物(GMAP)を接種しなければ長く生きられる。そう、人を食べ続ければ安全であると言うことを。
そして10年前、新人類となったGMA同士の食料争奪戦が始まった。