一難さって…
ーパチ、パチ、パチ、パチ、パチ
タロウの背後より聞こえる拍手。
『ッ!?』
イヌ野郎に予想外に追い詰められ、以上に気が張っていたタロウは音のする方へ目を向けた。するとそこには、三人の男女がいた。
『ガッハッ ハッ ハ、手助けしようとおもうたが、実に見事じゃった!』
図太く、低音な声でありながらもよく通る声が暗い通路に響き渡る。その男は、頭は寂しいもの、筋骨隆々な体をしており、いかにも歴戦の強者と思わせる風貌である。
『もう、父さんったら!迷宮の中でいきなり後ろから声をかけたら、誰だってびっくりするわよ!』
そう言うのは、男性の側にいる一人の少女である。透きとおるような水色のロングヘアー。手入れも丁寧にされているようで、一目に見て綺麗である。歳は15、6であろうか。目鼻立ちも整っており、かなりの美少女である。白いローブのようなものを身につけ、手には、ゲームでよく見かけるような杖を手に持っている。
『まあまあ、ティアさん。アーデルさんを責めちゃいけませんよ。見事な戦略で、コボルトを倒した、有望な少年がいるんですからね!それに、そちらの少年は全く驚いていませんよ。』
そう言ったのは、まさに色男といった感じの容姿端麗な金髪の男性である。こちらも、現代社会で見かけたら、何処のコスプレイヤーと言わんばかりの青色の鎧をまとっている。
『むぅ〜、確かに凄いとは思ったけど…でも、リックさんはお父さんに甘すぎです!調子に乗らせちゃだめなんですらね!』
どうやら先程のハゲ、もといマッチョな男性がアーデル、美少女がティア、金髪がリックと言うらしい。
何がなんだか分からないタロウ。
ーなんだこのオッさんに、ガキ、それに優男は…どう考えても日本人じゃないな。それに、少年なんか何処にもいないし。こっちはイヌ野郎を倒して疲れて…はないけどちょっと一休みしたいんだよ!
タロウは怒っていた。直ぐに悪態をつくあたり精神年齢の低さが伺える。
『ごめんなさいね。突然。私の名前は、ティアリス、こっちにいるのがお父さんのアーデル。この人がリックさん。あなたと同じ、冒険者よ!それにしても、さっきのコボルト戦凄かったわ!』
ー聞いてねーよ。人様の夢に勝手に出てきて、いきなり図々しいな。コボルトって…ああさっきのイヌ野郎のことか。実際に見ると、あんな感じなのね。人位の大きさで、剣もって向かってくるのは恐怖以外何者でもないな。
こいつらは…登場人物だろう。なんかのゲームの影響だろうな。こういう感じの出会いもまあベタだしな。外人なのも、歴史もののゲームとかでしか日本人とか出てこないし。夢の中で、自分が置いてけぼりの設定は癪だが、とりあえず何か応えとかないと。
『いえ、とんでもありません。あなたたち程ではありません。』
タロウは完全なる内弁慶である。心の中では、ボロカスに言うが例え夢であろうと人前では悪態をつくことは出来ない。とりあえず、様子見で返答をしたのだが、一転して場は静まる。何処と無く、タロウを警戒しているようだ。
ー意味が分からん。話しかけるのか黙るのかどっちかにしろよっ!
心の中で愚痴るタロウ。
『ハッハッハッ!邪魔したらいかんと思って、盗み見みる形になってしもうたわい。済まんかったのう。しかし、見事じゃったわ!』
ーなっ!?まさかさっきのヘタレの戦いを見られてたのか。ふざけるな!観覧料を払え観覧料を。しかも、見事だと!?あれか!素人なりには頑張りましたね(笑)ってか。ふがけやがって。
アーデルが言ったことを盛大に勘違いするタロウ。この話題から離れたいタロウは、
『奇遇ですね。こんな所でお会いするとは。』
冒険者が迷宮に行くのは、普通に考えれば、当たり前のことであろう。
『ガッハッハッハッ!深層ならまだしも、浅層で冒険者に会うのは当たり前じゃろ。コボルトとの戦いといい、面白いガキじゃ。のうティア?』
『ふふふっ。本当だね。私たちも今日、あなた含めて5組に遭遇したし』
『ははっ!君も冒険者なら同業者とあうなんて日時茶飯事だろ!』
見事に矛盾をつかれたタロウ。ぐうの音も出ない。しかし、おかげか多少なりとも場はなごんだ。
ーこいつらなじりやがって。タロウの彼等に対する第一印象は最悪の一言である。