冒険者登録
ー死ぬかと思った…
ティアリスの抱きつきから解放され息を整えるセティ。
ティアリスも自分のしたことが恥ずかしくなったのか、顔を赤らめている。
『あ、あの…セティ。迷惑かけると思うけれどこれからよろしくお願いします。』
ー怖いよ…
放心状態のセティ。普通なら、ティアリスのような美女に抱きつかれれば嬉しいのだが、先程の羽交い締めが余程効いたのだろう。心ここに在らずである。
そんな中、背後から
『そういうことなら、話しは早いのぅ!』
見るとアーデルとリックがそこにいた。そして優しく愛娘に語りかける。
『ギルドで起こったことは聞いた。セティも済まんかったのぅ。ティア、確かに儂はお主を過保護にし過ぎたのかもしれん。それが、ティアの成長を妨げていることに気付きながら、儂のエゴで囲っておった。』
アーデルが申し訳なさそうに話す。
『お父さん…ううん、でもそれに甘えてきたのは私だから…。でも、これからは違う。最初から鍛え直し、一人前になります。それが、お母さんとの約束でもあるから…!』
『ティア…』
『ティアリスさん…』
アーデルとリック二人とも感慨深い表情をしており。特にアーデルは、泣きそうである。それ程に娘の心の成長が嬉しいのだろう。
ーサディスト女怖いよ…
未だ放心状態のセティ。いい気味である。
『それで、話が早いって…?』
『実はの、…』
アーデルがゆっくりと話しだす。
ーーーー
『それでは、これから、セティ様専用の冒険者カードを新規発行いたします。こちらが、冒険者カードとなりますので、どうぞ。』
そう言いながら、ギルド職員がセティに黒いカードを手渡した。掌に収まるサイズであり、材質は硬い。
ーこれが、冒険者カードか!思ったよりシンプルだな。それに、何も書かれてないな。
『それでは、ご説明いたします。今お渡ししたものが、冒険者カードとなります。現在は何も記載がないですが、このカードに使用者ご本人様の魔力を流すことで、その方専用のカードとなります。カードの役割は主に三つあります。
①身分証として、街の出入り、ギルドで迷宮などで獲得した物を売却することが出来ます。
②冒険者ギルドでの依頼の受注。依頼はカードがなければ受注出来ません。依頼の受注時と完了後にご提示いただくことで、依頼の内容をギルドで管理しています。また、その方が後どの程度依頼をこなせば、上位のクラスへ昇格出来るのかも表示出来る仕組みとなっています。
③ステータスカードとして、使用者がどの程度の実力があるのか、数値化することが出来ます。ご注意が必要なのは、あくまでも数値は一つの目安となります。体調などによっても増減しますので、ご留意くださいませ。』
『ステータスカード…』
セティが疑問に思う。何故ならば、カードには何も記載されていないからだ。
『はい、未使用のカードにご本人様の魔力を流すことで、冒険者カードはその方専用のものとなります。魔力を流すことにより、ステータスも表示される仕組みとなっています。また、使用者以外がカードとして使おうとしても、反応いたしません。』
ー魔力を流すって……どうやるんだよ…
そもそもの時点で躓くセティ。前途多難である。
『それでは続けさせて頂きます。次に依頼の受注についてです。各地のギルドでは、それぞれ難易度の違う依頼を冒険者に出しております。ギルドが出しているものもあれば、市民の方、商人、貴族と発注者は様々です。ギルド内には依頼黒板がありますので、それを見られて、職員へお声がけください。依頼はそれぞれ、G〜S級まで難度が分かれております。上位のクラスの受注の制限は特にございませんが、受注後に変更は原則認められません。また、失敗した場合には、成功報酬に応じて違約金が発生いたしますので、自分のランクとかけ離れたものは選ばれない方が良いかと思います。依頼内容は、モンスターの討伐や、採取、犯罪者の捕縛、お悩み事解決など様々あります。ここまでで、ご質問がございますか?』
ー話しが長い…説明書をくれ、説明書を…
辟易するセティ。飽きてきたようである。
『では、迷宮についてです。迷宮には冒険者以外の方も入ることは出来ますが、迷宮内で得た物は冒険者ギルドが独占的な権利を有しております。そのため、ギルド以外でも、売却は可能ですが安く買い叩かれる場合が多いため、ギルドでの売却をオススメします。迷宮もその難易度によって様々です。セティ様には、関係ないかもしれませんがら、迷宮内のモンスターは外にいるモンスターよりも強いため、初めの内は外である程度レベルを上げてから迷宮へ臨むのが一般的です。セティ様は既に迷宮を探索されたことがあるとのことですので、この辺りはご存知かと思います。最後に、冒険者カードの紛失は新たに再発行手数料がかかります。また、ペナルティとして2ランクの降格となりますので、ご注意くださいませ。新規発行手数料は既に頂いておりますのでご安心くださいませ。』
ー終わったか…
やっとかと思うセティ。あまり頭には
『ご丁寧な説明ありがとうございます。分からないことがあればまた、伺ってもよろしいですか?』
『は、はいっ!』
鮮烈なデビューを飾ったセティ、将来有望とあってか、ギルド職員の中でも有名人である。見た目は小さな子どもということもあり、人気は急上昇している。
『それでは、先程のカードに魔力を通わせてください。』
固まるセティ。やり方が分からないのだ。その表情は険しい…
『セティ様?』
魔力を流さないセティに疑問を抱くギルド職員。それもそのはず、説明を受ければ全員が必ず魔力を流してきたならからである。カードをじっと見つめるセティ。かなり不味い状況だ。そして、何かに気付く職員、
『も、申し訳ございませんでした。魔力を流してもご自分のステータスは他者には分かりません。ギルドが管理することもございませんので、ご安心くださいませ。』
セティが険しい表情をしていたので、何を勘違いしたのか、ギルド職員は慌ててセティに謝る。
ー流石、総支部ギルドマスターが認められる方ですね。情報の流出を懸念されているなんて…しかもギルドに対してまで…
確かに情報は大切である。自分のステータスや能力、スキルなどの情報が漏れれば、最悪の場合命を落とす可能性もある。そういう意味で対外的には冒険者ランクしか情報は公開されていない。自分より格下の実力と数値で分かれば、冒険者が冒険者を襲うということが頻繁する恐れがあるからだ。
ただ、残念ながらそんな考えがセティにあるはずもない。
ーんなことは、どうでも良いんだよっ!魔力の通わせ方を教えろ!
『魔力についてはどんな感じで流せば良いのですか?何か指定がありますか?』
馬鹿にされないよう知っているかのように話す小癪な男。
『えっ?あ、はい、特に指定はありませんが、実際の魔法をこの場で使用されるのは少し…』
ー…ふーん。つまり、魔法を使うイメージをすれば良いだな?信じるぞ?大丈夫だ。ファイヤーボールは使えたからな。魔力はあるはずなんだ!
魔法を使った時のようにイメージをするセティ。
ーーーーー
冒険者カード更新中…
セティ・フォン・シュバルツダンケルハイト
ランク:G
Level:1↑
体力:35
魔力:0
攻撃:24(800)
防御:15 (3)
素早:220(15)
知力 :20
運 :1115
スキル
創造魔法
装備
透刃
シャツ
ズボン
スニーカー
ーーーー
ステータスカードを見たセティは…
ーくっそ弱っ!
彼の冒険は始まったばかりだ。