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勘違いはここから始まる⑧

その後は順調に帰路に着く三人と、一人。アーデルとリックがモンスター達を倒し、ティアリスがモンスターの石を回収するという各々に決められた役割をしっかりと果たす。帰路の途中、三人にとっては見慣れたモンスターであるが、セティにとっては全く初見のモンスターも何体か出現した。しかし、彼の興味は其処にはなく、むしろ気付いていない。未だに透刃に見惚れているのである。


ー素晴らしい!手に持っても殆んど見えないぞ。格好良いな〜。これであの小娘が着ている魔法使いのフードがあれば、謎めいた魔法剣士じゃないか。一流の剣技に一流の魔法。決めた!俺は今日から魔法剣士セティだ!


脳内妄想を繰り広げるセティ。一流の技術は勿論持ち合わせてはいない。


『もう、出口だねセティ!』


『そうですね。先導頂きありがとうございます』


即座に返答するセティ。しかし、実際には、


ー知らねーよ。初めての場所なんだし分かる訳ねーだろうが。


愚痴るセティ。確かに、始まりは迷宮の第5層であるためこの場所には覚えがない。しかし、入口は一つであるため、ティアリスはセティもこの場所を通って迷宮に入っていると思い込んでいる。


『ふふっ、どう致しまして!』


ー『ふふっ、どう致しまして!』じゃねーだろうが、お前は何もしていないだろうが。石ころばっか集めて一切役に立ってなし。


石すら集めようとしなかったセティに言われたくない。


脳内でティアリスを貶しながら、セティは前を向く。上下左右には歩いてきた道と同じ石で出来た壁があるが、前方には壁がない。代わりに不自然に霧が立ち込めている。これこそが、魔霧であり外の世界と迷宮とを繋ぐ場所となっている。


『さて、戻るかのう』


そう言いながら、立ち込める霧の中に消えていくアーデル。ティアリスも後に続く。


『セティさん?どうしたんですか?』


立ち尽くす、セティを不思議に思うリックが声をかける。


『あ…いえ、何でもありませんよ。リックさん。先に進んでください。』


『??、はい。』


疑問に思いながらも、ティアリスに続き霧の中へと消えるリック。


それを見てセティは


『えっ?えっ?これ大丈夫だよね??つーか、あいつら説明しろよ。何だよこの霧は!本当に大丈夫だよね??』


情けなく、ビビっていた。


『いや、大丈夫だ!あいつらもすんなり行ったんだ。勇者たる人間がビビってどうする!』


勇者だったり、剣神だったり、魔法剣士だったり忙しいセティである。意を決して霧の中へとむかっていく。


ー何だよっ!何も見えねーじゃねーか。どっちに進んだら良いんだよ!涙目になりかけのセティ。


彼とその周りで引き起こされる、勘違いの旅路がまさに始まろうとしている。

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