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第九話 開戦前 その9

米国に潜入したスパイは、当時の白人社会一般の人種的偏見に合わせて、簡単な英会話しかできず、英語の読み書きもできない愚鈍な有色人種の日系人やハワイ人の使用人を演じた。


米政府や軍の高官には重要な会話を使用人の前でしたり、機密書類を自室の机の上に広げたまま使用人に掃除させたりする者もいた。


英語やアメリカ文化について高度な訓練を受けて使用人に化けたスパイたちは、そうして情報収集をしたのだ。


この手段は、機密とされ、戦後も長い間公表されなかった。


「艦長、他にもニュースがあるぞ」


「山本大将、通信文には他に何も書かれてはいませんが?」


「ニュースが無いのが、ニュースだ。アメリカの首都ワシントンで臨時議会が召集されたら、ただちに連絡が来るようになっている。それがいまだに無いということは……」


「やはり、アメリカは『宣戦布告無き、ハワイ奇襲』を目論んでいることになりますね?」


山本大将は、雪風艦長の言葉にうなづいた。


「ああ、そうなるな。アメリカでは宣戦布告する権限は議会にある。大統領には無い。大統領は今回のことには議会の同意は得られないと考えたようだな」


「大統領には『戦争を遂行する権限』はありますからね。しかし、宣戦布告をしないということは、我が日本と全面戦争をするつもりは無いということですね」


「ああ、あくまで『ハワイ王国をめぐる限定戦争』におさめるつもりのようだな。だが、『限定戦争』だとしても、ハワイ王国の国民にとっては『国家存亡の危機』だ」


「だからこそ、『大和』……、いえ、『カメハメハ』をハワイ王国は必要としているのですね?」


「そうだ。幸い、米艦隊がハワイ諸島を攻撃可能な位置に来る前に、こちらがハワイに到着できそうだ。少し、急ぐとしよう」






「キンメル大将、お時間です」


参謀長の言葉に、キンメル大将はうなづいた。


「事前の計画通りに、作戦を開始せよ」


四隻の空母の飛行甲板では、すでに艦載機の発進準備は整っていた。


グラマンF4Fワイルドキャット戦闘機、ダグラスSBDドーントレス急降下爆撃機、ダグラスTBDデヴァステーター攻撃機の編隊が飛び立った。


攻撃目標は、ハワイ諸島オアフ島真珠湾にあるハワイ王国海上近衛隊基地であった。


史上初の空母の集中運用による軍港への空襲をした艦隊の指揮官として、ハズバンド・E・キンメル大将の名前は歴史に刻まれることになる。


編隊は、オアフ島への空路上で一切妨害を受けることはなく、目標に到達した。

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