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第八話 開戦前 その8

キンメル大将の命令により、戦艦部隊と空母部隊に分離した艦隊を、海中から見ている「目」があった。


海上に潜望鏡を突き出した日本海軍の潜水艦であった。


その潜水艦は、米艦隊が通過して充分に時間が経ったと判断してから海上に浮上すると、通信用の電波を発信した。






「米艦隊の陣容は、戦艦5隻と正規空母4隻が主力、戦艦部隊を前衛、空母部隊を後衛にしてハワイに向かって航行しているか……、予想通りだな」


駆逐艦「雪風」艦橋で、山本五十六大将は、伝令から受け取った通信文を読んでいた。


潜水艦から発信した電波は、ハワイにある通信所で受信され、それが強力な通信機を装備している「カメハメハ」に転送され、「カメハメハ」からは手旗信号で「雪風」に通信が送られた。


「山本大将、ハワイ王国情報部が予想した。米艦隊の予想進路上に、我が海軍の潜水艦を哨戒のために配置しておきましたが、進路も戦艦や空母の数も、ハワイ王国情報部が予想した通りでしたね。ハワイ王国情報部の『勘』は凄いですね」


「艦長、予想が当たったのは、『勘』などという曖昧なものではない。地道な情報収集と的確な情報分析の結果だ。ハワイ王国は軍備は制限されたが、情報部に制限はないからな、我が海軍も協力して情報部を拡張した甲斐があった」


「ハワイのオアフ島に我が海軍が技術援助した巨大な電波塔がありますからね。それによる通信傍受の結果ですね」


「まあ、そうだな」


山本大将は言葉を濁した。


戦後になって、米艦隊の陣容や進路の予想が的中したのは、オアフ島にある巨大な電波塔による通信傍受によるものと盛んに一般に宣伝された。


それは事実であったが、事実の半分しか言っていない。


公表されなかった情報収集の手段には、最も昔からある人間がするもの、いわゆる、スパイによるものもあった。


スパイと言っても、米映画によくあるように、スーツをスタイリッシュに着こなした男性スパイが美女を侍らせて、敵国の重要施設から機密書類を盗み出すようなものではない。


ハワイ王国情報部が、米国本土に送り込んだスパイは、召使いやメイドなどの使用人であった。


当時の米国では、軍需企業の重役などの富裕層は大きな屋敷に住んでいて、屋敷での生活を維持するためには使用人を大量に雇わなければならなかった。


連邦政府の官僚や軍の将校などの中流家庭でも、当時は人件費が安かったので、1人ぐらい使用人を雇うのは普通であった。


そこにスパイを送り込んだのであった。

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