第三話 開戦前 その3
米系議員の表向きの主張は、「このハワイ王国は米国と日本の係争地域となっている。私は米国出身ではあるが、今はハワイ人である。ハワイが日米の戦争に巻き込まれないために最も良い方法は、ハワイ王国が軍隊を放棄して、非武装中立国となることである」であった。
裏読みできる人から見れば、その主張は、明らかに将来の米軍によるハワイ王国の武力併合をやりやすくするためのものだった。
しかし、当時、第一次世界大戦の終結後、その戦争の惨禍が世界に知れ渡っていたため、ハワイ王国の国民の間でも戦争を忌避する気持ちが強かったので、その主張を指示する一般市民は多かった。
そのため戦争放棄の憲法改正は、議会の賛成多数で可決されたのだった。
ハワイ国王は阻止しようとしたが、立憲君主制であるハワイ王国では、議会で多数派になったのを拒否することはできず。
ハワイ王国軍は廃止されることになった。
それに慌てたのが、ハワイ王室と日本政府であった。
憲法の戦争放棄の条文に違反しないように、武力を保持する方法に頭を悩ませた。
その目的のために使われた組織が、ハワイ王室近衛隊であった。
王室近衛隊は、元々は王族の身辺警護をするための少数の警備員がいるだけの組織であった。
近衛隊の予算は、国家予算では無く、王室の個人資産から予算が出ているため、予算編成権を持つ議会も口は出せなかった。
そうして、近衛隊は組織を拡張され、陸上近衛隊・海上近衛隊・航空近衛隊となった。
事実上の陸軍・海軍・空軍ではあるが、「王室警護のための組織であり、軍隊では無い」とされた。
議会の米系議員からは、「王室警護を目的とするならば、組織が過剰ではないか?憲法違反ではないか?」と質問された。
その回答は、「ハワイ王室を守るためには、ハワイの国民・領土を守らなければならない。歴史上、国民・領土を守れなかった王室は衰退・消滅している。警護のための必要最小限の武力を持つことは憲法上も許されていると思う」であった。
米系議員たちは、近衛隊の廃止が難しいと見ると、次の手を打った。
近衛隊の装備を制限することにしたのである。
例えば、陸上近衛隊では、戦車の保有の禁止。
海上近衛隊では、駆逐艦以上の艦艇の保有の禁止。
魚雷の保有の禁止。
航空近衛隊では、保有するのは、戦闘機・哨戒機・輸送機のみで、爆撃機・雷撃機の保有禁止。
「近衛隊は軍隊では無いのだから、過剰な装備は必要無い」と、米系議員たちは主張した。
ハワイ国王は、主張を受け入れるしかなかった。
キンメル大将は、そんなことを思い出しながら苦笑した。
「しかし、日本が、あんな裏技でハワイに戦艦を譲渡するとは思わなかったな」
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