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第十二話 奇襲 その3

キンメル大将は、ハワイ王国オアフ島真珠湾に対する航空攻撃による目標は、燃料タンク群に限定した。


「航空攻撃による戦艦の撃沈は不可能」と、キンメル大将は考えていたからである。


確かに、当時、米海軍空母艦載機に搭載可能な航空爆弾や航空魚雷では、真珠湾の港内にいる戦艦の撃沈は不可能であった。


しかし、同じ頃、日本海軍内部では、万が一、ハワイ王国がアメリカ合衆国の支配下になり、真珠湾が米海軍の根拠地になった場合の研究が進められていた。


真珠湾の港内にいる米戦艦を撃沈するために、長門型戦艦の主砲弾を改造した航空機用徹甲爆弾や浅深度用航空魚雷を研究開発しており、少数ではあるが、実戦レベルの物を試作もしていた。


しかし、米海軍では、航空爆弾や航空魚雷を真珠湾攻撃のために改造しようという発想その物が無かった。


そのことから、「当時の米海軍より日本海軍の方が、航空機に先見性があった」と唱える歴史家もいる。


それに対する反論では「米海軍は、航空攻撃による戦艦の撃沈にこだわらずに、燃料タンク群の破壊という戦略レベルの日本海軍より広い視野を持っていた」というのもある。


しかし、そういう議論、その物が無意味という意見もある。


なぜならば……。






「派手に燃えているな」


山本大将は、ハワイ王国海上近衛隊司令部の建物の窓から燃え盛る燃料タンク群を見ながら、つぶやいた。


その口調は、ニュース映画で、赤の他人の家が燃えているのを見ているかのようであった。


「山本大将、作戦通りですな」


幕僚の言葉に、山本大将はうなづいた。


「ああ、米海軍は見事に引っ掛かってくれたよ。ハリボテの囮の燃料タンクが燃えているのを見て、今頃は喜んでいるだろう。本命の地下燃料タンクの様子は?」


「無事です。と言うより、まったく攻撃を受けていません。防諜が上手く行って、地下燃料タンクの存在その物を米軍は知らないようです」


「そうか!」


山本大将は、笑みを浮かべた。


オアフ島の地上にある燃料タンク群は囮で、わずかの燃料しか備蓄されてはいなかった。


大量の燃料が備蓄されている地下燃料タンク群は、建設する時に、防諜のため、民間の建設業者は一切入れなかった。


陸軍で言えば工兵隊に当たる日本海軍設営隊とハワイ海上近衛隊施設科部隊が、建設したのだ。


通信文を持った幕僚の一人が、山本大将に近づいた。


「山本大将、ハワイ王国国王陛下より入電。『ハワイ・日本安保条約により、ハワイ国王として、ハワイ王国近衛隊全部隊の指揮権を山本五十六大将に委ねる』です!」


「了解した!国王陛下に返電!『誓って戦果を挙げる』」


山本大将は、使える手札とチップが増えたギャンブラーの顔になった。


「諸君!反撃だ!」

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