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第十一話 奇襲 その2

「被害は?」


山本大将の質問に、幕僚は答えた。


「はい、米軍の空襲は、この真珠湾にある海上近衛隊の基地に集中していて、市街地には被害はありませんでした。今のところ、民間人の被害は報告されておりません」


「民間人に被害が無かったのは良かった。基地の被害は?」


「見ての通りです」


幕僚は窓の外を指し示した。


広大な敷地にある燃料タンク群が燃えていた。


「米軍機は、燃料タンクを主な目標にしていたようです。日本海軍の連合艦隊ならば、半年から一年は動かせる燃料が焼失するでょう」






「キンメル大将、ハワイ空襲部隊より入電!読み上げます!『我、奇襲に成功せり、パールハーバーの燃料タンク群は炎上中』以上です!」


通信参謀の報告に、戦艦「ミズーリ」の艦橋では歓声が上がった。


「諸君!喜ぶのはまだ早い!戦いは始まったばかりだ!」


そう言って、部下たちをたしなめるキンメル大将の顔も、ほころんでいた。


「キンメル大将、おめでとうございます。奇襲成功により、勝利への道が開けました!」


「うむ、ありがとう。航空参謀」


「まあ、血気盛んな我が海軍のパイロットたちは、出撃前、燃料タンクよりも港にいるはずの敵艦を攻撃することを希望していましたが、どうやら、命令違反をしたパイロットは一人もいなかったようです。これも、キンメル大将が直々にパイロットたちを説得してくださった、お陰です」


「うむ、特に、パイロットたちは『大物狙い』をしたがるからな。港に戦艦『カメハメハ』がいたとしても無視するように納得させるのは大変だった。だが、理路整然と説明したら、最後には納得してくれたよ」


この時、キンメル大将がアメリカ西海岸から艦隊が出航する前に、パイロットたちを説得した内容は、次のような物だった。


急降下爆撃機ドーントレスの爆弾搭載量では、戦艦「カメハメハ」の装甲を貫くのは、不可能である。


雷撃機デヴァステーターでは、真珠湾は水深が浅いため、航空魚雷は投下しても海底に突き刺さってしまうので、雷撃は不可能であり、爆弾でも、やはり、爆弾搭載量が不足している。


駆逐艦以下の艦艇ならば、航空攻撃で撃沈は可能だが、それは、航空機でなくても、戦艦5隻を主力とする部隊でも可能である。


航空機は、航空機にしかできない任務をするべきである。


それが、真珠湾にある燃料タンク群への空襲である。


戦艦の射程内に入る遥か前に、航空機ならば爆撃が可能である。


軍艦は、特に戦艦は、行動するには、大量の燃料を必要とする。


燃料を失って、動けなくなった戦艦は、「撃沈」したのと同じである。


こう言って、キンメル大将は、パイロットたちを説得した。


このパイロットたちを説得した内容が、21世紀の現在にいたるまでのキンメル大将の評価に対する議論の元になっている。

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