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第十話 奇襲 その1

「臨時ニュースを申し上げます!臨時ニュースを申し上げます!アメリカン合衆国市民の皆さん!こちらホワイトハウスです!これより、大統領からの緊急発表があります!この放送をお聞きの方は、なるべく大勢の周りの人たちに、大統領からの緊急発表があることをお知らせください!繰り返します!臨時ニュースを申し上げます!臨時ニュースを申し上げます……」


ラジオ局のアナウンサーにより、同じ言葉が何度も繰り返された後、大統領の声がラジオから流れた。


その声は、大統領が選挙に当選した理由の一つである頼もしい父親のようであった。


「我が愛する合衆国市民の皆さん。今日は、皆さんに悲しいお知らせをしなければなりません。本日、ハワイ王国時間で未明に、ハワイに在住するアメリカ市民に対して、現地武装勢力による迫害行為が行われました。一部では死者が出ているとの情報もあります。私は大統領として、偶然ハワイ近海にいた海軍と海兵隊部隊に、ハワイ王国の治安を回復するように命令しました。ここで、この放送をお聞きの皆さんの中には、疑問をお持ちの方をいらっしゃると思います。『大統領は、選挙の時に、合衆国は戦争に参加しない。若者を戦場に送らないとの公約を掲げて、当選したじゃないか?それなのに、何故、今、ハワイに合衆国軍を派遣するのか?』とお考えの方がいるでしょう。そう思われるのは当然です。しかし、私の公約を思い出していただきたい。『戦争』とは国家同士の間で行われるものです。ハワイにおける武装勢力は、『犯罪者の集団』にすぎません。それに対して合衆国軍は『保安官』となり犯罪に立ち向かわなければならないのです。我が合衆国政府はハワイにいる自国市民の生命を守るために……」






ハワイ王国オアフ島真珠湾にあるハワイ王国海上近衛隊司令部の建物の中で、山本大将はアメリカ全土で放送されている米大統領のラジオ演説を聞いていた。


「合衆国大統領の言うところでは、どうやら、我々は犯罪者の集団らしい」


山本大将は、戦傷で二本の指が失われた自分の左手を見た。


「この左手を見せて、『こういうモノだ』と冗談を言ったことがあったが、大統領閣下は本気に取られて、私をジャパニーズ・マフィアのボスだと思われたのかな?」


山本大将の冗談に、司令部の幕僚たちは笑った。


日本人の幕僚だけでなく、ハワイ人の幕僚も笑ったのは、日本の海軍兵学校などへの留学経験がある者が、ほとんどだったので、山本大将の冗談の意味が分かったからである。


笑い声が収まったところで、幕僚の一人が進み出た。


「山本大将、ただ今の空襲による被害の集計がまとまりました」

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