第一話 閉ざされた冬の中で…
冬も終わりを告げようとしている今日この頃
あれからもう、4年もたったのか…
あいつが姿を眩ましたのは小学六年生の時だ。
飛行機事故…
遺体も未だに見つかってない 皆が皆、海の藻屑となったのだと諦めている。
いつも一緒にいる仲良し五人組… あいつはいつも笑ってた…
あの事件から俺ら五人の関係は大きく変わった。
会うと皆して顔色を疑って どこか他人の様な素振りをして…
そんな今でもあいつは笑ってくれるだろうか?
なんて下らない事を考えては窓越しに眺めた空を映す
放課後、集合場所にしてた駄菓子屋、去年店をたたんじゃったっけ…
通学路の途中にある川でいろんなもんを捕まえたっけ…
ザリガニやカエル、カメ… 色々と捕まえて皆してお袋に怒られたっけ…
小学校も芝生を入れて印象が変わったんだよな…
俺らがいた時の面影だけ残して…
お前が居ない間にいろんなものが変わってしまった。
「み…る …みつる 花崎みつる!」名前を呼ぶ声に俺は我に戻った。
顔を上げると目の前に先生がいた「しっかりしてくれよ もうすぐ二年生になるんだぞ?」
先生の言葉が余計時の早さを感じさせた。
あいつを… 大宮真を置いて俺らにだけ進むこの時間…
あいつの時間はあの時からもう二度と進まないんだ…
溶け残った雪が俺らの心を映しているようだった。
授業が終わり 学校が終わり チャリにまたがり家へと向かう 今日も昨日の繰り返し…
何も変わらない毎日 何も変わらないいつもの道 何も変わらないいつもの風景
それでも、あいつと違って俺らの時間が一秒一秒進むことに違和感を感じるんだ。
曲がり角に差し当たった瞬間、不意に姿を現した人影にブレーキをめいっぱい握り締めた。
チャリは音を立てて倒れこみその人影と一緒に俺はふっ飛ばされた
謝った後、頭を上げてその人影を見て俺は驚きと同時に喜びが込み上げてくるのを感じた。
「ま…こと…?」自分でも驚くほど声が震えていた…
だがそんな期待はあっけなく裏切られるハメになった。
彼はゆっくりと首を横に振ってかすれた声でこう言った
「僕は くす…のき こ…のは…」
その時、失望感と同時にどこか他人とは思えない不思議な感覚に襲われた
唖然とする俺を前に彼は「少し…つまずいた だけなので…」っと言い残すと駅に向かって消えていった
家に帰って畳に寝そべって天井をただ見つめて…
「やっぱり人違い… だよな」独りでにそう呟く
しばらく天井を眺め続けてると突然 呼び鈴を鳴らす音がした。
玄関を開けて見るとそこには大柄な体の男の姿があった… 仲良し五人組の一人、青桐宇次の姿だった。
宇次は俺の顔を見るなり「みつる…だよな? 懐かしいな!」
相変わらず「みつる」のイントネーションがおかしいのは変わってはいないようだった。
宇次は小学校を卒業した直後に海外に引っ越したから会うのは本当に久しぶりだ…
あいつに今日来た理由を聞くと真の命日だから小学校に行こうっと切り出してきた。
断ろうと口を開こうとした時「じゃぁ、行こうぜ?」と有無も言わさずに行くことにされてしまった。
卒業前に飼育小屋の近くの大きな木の下に作った小さな墓…
学校に着くとその墓の前にしゃがみこんで手を合わせてる少女がいた。
オーバーオール姿のお団子ヘアで服装も面影もあの時のまま… 園型花蓮
「あれ、かれんだよな?」宇次がそう言うと彼女はこっちを向いて何か言いたげな顔を見せて視線を逸らした。
彼女は立ち上がって「あんたら… 何しに来たの?」と言うと墓参りに来たことを宇次は話した。
その話を聞くなり花蓮は俺に近づいて 胸倉を掴むと俺に叫ぶように言った。
「だから、あん時 私らに真のことのは忘れろって言ったあんたが何しに来たんだって言ってんの?」
掴んだ手は強く震えていた俺はやっと彼女が涙目だったことに気付いた。
俺はただ謝ることしか出来なかった。
宇次が止めに入っていたが俺はただただ謝ることしか出来ずにいた…
しばらく花蓮は俺を睨んでから手を緩めてため息をこぼした
「ごめん」うつむき際に彼女がそう言うと
謝んなよ 悪いのは… お前らの関係を崩したのは… 俺なんだよ… 俺が… 俺が…
こんなバカみたいな感情が浮かんでは声にならずに逃げ場を求めていた…
あの日、真を殺したのは俺だ…
俺の記憶の中からあいつを殺して、こいつらの記憶からも殺そうとしてたんだよ… 俺は…