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エピローグ

これで完結です。かなりハショッテ書いたので荒れてます。改稿して、なんとかします。今回は伏線がかなり多いのですが、そのつながりも見えにくくなってるので。

 絵の向こうに入ると、そこはそのまま、原色ウェーブが波打つ空間だった。

 床も天井も壁も目が痛くなりそうな色調で支配され、その中で、波も大荒れに荒れていて――魔王城崩壊の兆がそこにも現れていた。

 ってことは、ここも城内部のどこかなのだろうが、いったいここってどこなのだろうか、その部屋の様子からだけでは皆目見当も付かなかったけど。

 僕より先に来ていた魔王と予言者とUMA(ユーマ)が一斉にこっちに目を向け、魔王が「あれ」と指差した。原色ウェーブな床の上に、これまた赤、青、黄など派手に光沢を放つ石があった。

 旅人の(トリッパーズ・ストーン)だ。

「キメラに乗って帰るのよっ。ユウくん、一番前に乗れ!!」

「おうっ」 

 僕がキメラに跨るとその後に魔王、次に予言者とぽんぽん乗ってきて。

「どこを触ってるんだ、どこを!!」

「あたしの湯たんぽだもん♪ 湯たんぽたっぷたぷぅ♪」

「あんたのじゃないし、湯たんぽでもないからっ」

 ……こんな状況でもだやってるのか。

「じゃ。みんな行くぞ」「「オーケー!!」」

 原色ウェーブが一層その乱調ぶりを極めるサイケデリックな部屋の中で、床上の宝石がぱあああああっと白く輝き出し、僕らはその光の中に包まれて。

 全員が時空間移動し始めたその時、どがががががががああ!

 地下魔王城そのものが、最後の瞬間を迎え始めたのだ。

 城壁が崩れ、どこか下のフロアでズドーンと爆破音がした。

 すべての階でガラスがばりばりと割れ吹き飛び、噴煙を上げて城が崩れ落ちていく。

 魔王城が、この砂漠の世界そのものが、幕を閉じようとしていた。

 間一髪で、僕らは来た時のように三千世界の狭間を抜け、学園高台の岩の前まで戻ってこれたのだ。

「冒険初回にしては、波瀾万丈だったなあ。幸い一人の死者も出なかったが」

「死者って? そんなリスクまで想定してたのか魔王」

「ほら。拙者の予言が全的中しただろ?」

「ああ。きみが当たらないって言ってたやつまで」

 異界砂漠から帰ってきた頃には、辺りがもうすっかり暗くなっていた。その暗がりの中で魔王が言った。

「旅の総括は明日以降にでもやろう。こんな時間だから今日は解散。めいめい家に帰れっ」

 ということで、異界への旅第一弾は、つつがなく(?)終わり、皆が帰路に着いたのだ。

 なんだか泥のように疲れ果てていた僕は、家に着くなり豚カツと海老ピラフを平らげ、シャワーも浴びずに布団に倒れ込むや意識を失い、そのまま朝まで爆睡していた。


 そしてあくる日。昼休みの教室にて――。

 僕の隣は空席だった。喩子(ゆず)さんが、登校してこなかったからだ。

 後ろの席で、女子生徒が二人で話しているのが聞こえてきた。

「鏡さん、転校しちゃったんだって」

「え、なんで? そんないきなりって。昨日なんか、喩子(ゆず)さんあたしに来週の宿題のこと聞きに来たよ」

「そうだったんだ。あたしも事情は深く知らないけど、とにかく学校辞めちゃったんだって。そうそう。彼女って、一見まじめそうに見えるけど、いろいろ変な噂があったじゃない? 西高の罵詈駄(バリダ)(不良グループ)の男の子と付き合ってるとか、家が人格解体ブラック企業だとか」

 そ、そうだったのか。

「ま、まあね」

「なんでも彼女、某国の諜報活動みたいなこともしていて、それが学校にバレて一悶着あったらしい。それで『あたしはアイドルになります!!』とか意味分かんないこと言って、辞めちゃったらんだって」

「へ~。バカじゃんっ」

 ……って誰が作ったんだよ、その話。

 何もかも嘘八百だろ。一つとしてまともな話がないどころか荒唐無稽だ。

「そうだ。彼女はプルネリンアルダラ王国のスパイで、この学園の女子が体育の時間中に着替えるところや修学旅行でお風呂に入るところなんかをこっそり撮影して母国に送っていたんだ。そういうことを彼女がしていることを、この学園の監視カメラが見つけてそれが問題になったという話」 

 と、横からアニ声で割り込んできたのは……、魔王~~っ、おまえか、トンデモない話作って言いふらしてるのはああ!?

「ってことで、あの女のことはみんな忘れた方がいいぞ♥」

 なんで、僕の喩子(ゆず)さんをそこまで悪し様に言う!?

「ジュノ、それは違うぞ。鏡さん実は、同じクラスの友人がいやでしょうがないから辞めたらしいぞ」

 と少年な少女の声がして。

 あ、それ。正解に近いかも。予言者の方が普通だよな。

「特に隣の席の会った頃からストーカーしてくる転校生が凄くいやだなって言ってたし」

 って、ぜんぜん近くねええ!! なんなんだ、こいつも。

 もう付き合ってられん。

 昨日喩子(ゆず)さんから借りたあの英語のノートを、僕はカバンから取り出した。

 ウナルドやヴァンヴィ、ウッキーやウキキー。今となっては懐かしさすら覚える数々のデスネーキャラが表紙を飾るそれを。

 昨日借りたっきり、家で爆睡だったからまだ一度も目を通していないそのノートを。

 ぱらぱらっと中を捲った。

 そこには、助動詞の使用法や未来完了形や仮定法過去、英文法のことがざっと書かれていたが、ページ 最後に、授業内容と関係なく、彼女自身の手によるものであろう英語の走り書きがあった。

 ……なんだこれ?


 Remenber Me And Another World,Cause,I’ll be back anyday!!

(あたしと異界のことを忘れないで。あたしはいつか戻ってくるから!!)


 ノートを閉じて、僕は呟く。

「まあ、きみたちが何を言おうが、僕の中であの優しい天使みたいだった喩子(ゆず)さんは不滅だからな」

「「何こいつ、マジ、キッモ~~~~~~~~!!」」

「二人ではもるなっ」

 今日は、このすごく不思議な学園も至って平和だ。朝から魔物とか現れてないし、変なことだって起きてないし。こんな状況がいつまで続くかは知らないけど。


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