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彼の思い出と悪魔

私は、ずっと泣き続けた。

届くことないと分かりながら「帰ってきてよ・・・。」なんて呟いてみる。

彼が返ってくるはずないのにね。

でもどうしても呟いてしまう。

彼には届かないのに。・・・悲しい。動物にも分かるのかな。私が飼っている犬の「健太」が吠えてる。

彼にも懐いていたから、その別れを惜しんでいるのかもしれない。

「ワン、ワン!ワンワンワン!?ワン、ワン!ワン。ワンワン。」

彼と、もう一回話したいな。

「ワン・・・・。」

健太も、悲しいね。私も哀しいよ。悲しいなんて言葉じゃ足りないよ。涙が、止まらない・・・!

何て心の中で健太と会話しながら、犬と話すなんて私も結構疲れてるんだな、と思ってげんなりした。

彼が姿がもう一度見たい。

そう思って彼との思い出が詰まったアルバムを開けてみる。でも、それはすぐ後悔へと変わった。

涙があふれてきて、止まらなくなったから・・・。サッカーの大会で何回も優勝していた、彼のチーム。そんな将来有望な彼が死んで、何で私が生きてるの。


「酷い顔!折角人並み以上の顔なんだからぁ。涙でぐちょぐちょにするなんてもったいないよ?」

と思った瞬間に変な声が降ってきた。一瞬、彼かと思った。

「ごめんね?せっかく思い出に浸ってたのに・・・。失礼だよねー?」

え、誰?何で人が部屋の中に?

「ホントごめん。で、何で居るかというと~!ボクは悪魔なんだよね。」

そっか、この人も世間から逃げてるんだね。何で私の部屋に?とかは一回忘れてあげる・・・。

「ん~?なんか失礼な想像されてる気がするなぁ。」

やっぱり忘れられない。

「何で私の部屋にいるんでしょうか?」

「それはね!ボクは悪魔だからさッ!」

答えになって無い・・・。

「ボクはね、雨とか晴れとか操れないし、山なんて作れないし、火山を噴火させるとか無理だしぃ、津波起こすとか興味ないし?でも!泣いてる女の子がいたら駆けつけるのさ!」

それは・・・悪魔と言えるのかな?

「それでね、笑わせてあげるんだ。何でも願いをかなえてあげる。そして、とびっきりの笑顔を見るの!」

むしろすっごいいい人なんだけど・・・。

「もちろんそのかわりに、魂をいただくよ!だから、願いを言ってね?」

疑問符が怖い・・・!

逃げなきゃ!待って、魂をいただくって、死ぬってことだよね?

あれ、逃げる必要ないかも・・・。

「うん!涼香ちゃんなら逃げないと思ってたよ?恋は盲目だもんねー?」

無性にイラつくな。この男。

あ、でも。こんなことして彼は喜ぶかな。彼は悪魔に魂を売ったなんて言ったら怒るんじゃないかな。

「ねぇ、涼香ちゃん。もしかして止めようかなーとか思ってるの?」

「・・・何で私の考えてることが分かるの?」

「えへ☆当てずっぽうだよ!でも、涼香ちゃん結構顔に出るタイプだよね?僕には考えてること全部筒抜けだよ☆」

ああ、それで恋は盲目とかほざいてたんだ。・・・彼に、逢いたいな。

「未練ってヤツぅ?いいね!そういうの好きだよ!ボク。」

「趣味悪い・・・。」

思わずつぶやくと、男はとびっきりの笑顔で頷いた。

「デショ?涼香ちゃんったら馬鹿だなぁ。悪魔は趣味悪いモンだってぇ。当たり前だょ?」

イラつく!!

「じゃあ、その未練を胸に刻みつつ・・・ボクの部屋に行こ?」


そんな、私はまだこの世を去りたくない。彼との思い出をまだ振り返りたい。

彼の笑顔を眺めていたい。

彼の栄光を眺めていたいのに・・・!


涼香ちゃんは基本ネガティブシンキングですが、精神状態がオカシイからでしょうか。悪魔をすんなり信じちゃいましたね。

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