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願いと終わりの先に招かれし者達  作者: 紅の烏
始まりの断章
1/1

紅天は散り逝きて




 それは、ほんの一瞬の出来事だった。


 全て片付けたと油断していたのかもしれない。




「!! どいて!!!」



「え?」




 ここに迷い込んだのか、あるいは探しに来てくれたのか分からないけど。


 目の前に幼馴染の■■が現れて、そのすぐ後ろにいる■■■■が


 今まさに、■■の命を刈り取ろうとしている。


 そして、彼は今自分が命の危機にある事に全く気が付いていない。


 アレ(・・)は今からやっても絶対に間に合わない。

 

 ほぼ、無意識だった。


 そう判断した瞬間、私は幼馴染の元に駆け出して彼を突き飛ばし


 

 ―――ドスッ!!



 そんな音と共に何かが私の体を貫いた。




「………ッ!」




 同時に、常人ならば確実に気が狂うであろう激痛が身体を走る。


 傷口から溢れ出す血が制服を真っ赤に染め上げていき、口からは


 逆流した血が吐き出される。




「……■■!!」




 誰かが私の名前を叫んでいる。


 でも、今の私にはその声に応える余裕など全く無い。


 崩れ落ち倒れそうになる体を必死に、力を振り絞るかの様に支える。



 私がここで倒れたら、この■■■■は間違いなく幼馴染を、そして


 関係の無い人々を虐殺するだろう。



 そんな事許せる筈なかった。




「ッ……! 消え……な……さい!!」




 大量の出血の為か霞む視界の中、なんとか意識を保ち、目の前にいる


 ■■■■を見据え、右手に持つ刀に残った力を纏わせ



 ―――ザン!!



 真っ二つに切り捨てた。




「■■■■■■!!!!!」




 耳を塞ぎたくなるような断末魔を上げながら、■■■■は塵となって消えていく。


 

 パキィィィィィィ!!!

 

 

 同時に限界だったのだろうか、振り抜いた刀の刀身が、まるで役目を終えたかの


 様に音を立てて砕け散った。


 目の前の■■■■が完全に消滅した事を確認して―――


 


「何とか……終わったわ……ね」




 もう限界だった。


 周囲の安全を確認すると同時に、私は体を支える事が出来ずに


 自分が作った大きな血溜りの中へと崩れ落ちる。



 ―――ここまで、かぁ



 崩れ落ちていく僅かな時間、そんな事を思う。


 身体の状態、傷の深さ、出血の状況。


 もう、助からないは明らかだ。




「■■! ■■!!」




 私へと呼びかける声と共に、私の体が彼に抱えられる。




「しっかりしろ! ■■! くそぉ、血が止まらない!!」




 必死にそう叫びながら、止血しようとしてくれるが一行に止まる気配はない。




「いいよもう、私は……これまでの……様だから」



「馬鹿か! 今から医者に―――」




 彼の行動を遮る様に、私は何とか右手を彼の顔の前に挙げる。




「いいの、この傷にこの出血量だから、もう……私は助からない」




 もう完全に死んでも可笑しくないほどの出血に、腹に開いた風穴。


 既に視界は殆ど見えてなく、辛うじて意識を保っている状態である。


 身体の感覚も最早無く、先ほど手を挙げたのが限界だったのか


 今は指先す動かせなそうにない。



 

「何で! 俺を庇ったりしたんだ!」



「あはは……何故かしら……ね、……わたしにも、良くわからない……わ。


 ただ、気付いたら……貴方を……突き飛ばしていた……」




 息も絶え絶えに言葉を紡いでいく。




「多分、また……あの時の…様に…誰かを失うのが……怖かった……だと思う……」




 走馬灯の様に蘇るのは約十数年前の、本当に幼く未熟だった頃の罪の記憶。


 護る事の出来なかった、背負い続けた過去。


 同時に、死の間際に過去の記憶が走馬灯の様に思い出されるのは


 本当なのね、っと他人事の様に思う。




「だからって、自分を犠牲にしてどうするんだ!!」




 ああ……本当に、この幼馴染は優しいと思う。


 幼い頃、親族どころか両親にすら愛情を与えられなく、まるで割れ物を扱う


 かの様に接しられ続けた私に、普通に接してくれて様々な感情を教えてくれた。


 彼らがいたからこそ、今の私が居るのだ。


 

 だからこそ私は―――


 


「ごめんね……、そして、今まで……ありがとう……」



「おい、何……言ってんだよ■■」



 

 私を抱く彼の手が、震えるているのを感じながら


 ゆっくりと眼を閉じる。 

 



「私の……為に、悲しんで……くれて……本当に、ありが……」



「お、おい! 確りしろ!! 俺はまだお前に―――――――」


 


 私の意識が徐々に闇の中へと落ちていく。


 ただ、その直前には私は願った。



 ―――どうか、適うならば彼らが……。


 心優しい彼らが、私の死に囚われる事無く幸せに生きてほしい。



 その願いと共に、私の意識は深い闇の中へ完全に飲み込まれていった。




始めまして、紅の烏という者です。

本来なら私は二次創作がメインなのですが、絶賛スランプというかそういうもの

に陥ってしまいまして、息抜きというか、気分転換に練習も兼ねて初めてですが、思い切って一人称の小説を書いてみることにしました。

さて、この小説の概要ですが……まあよくある剣と魔法の異世界物です。

今回投下したのは、俗に言うプロローグであり、まだ物語の本編にすら入っていませんorz

でも、次回からちゃんと入りますのでご安心ください!

更新速度は気まぐれですが、初めてのオリジナル小説と言うのもあり、頑張って執筆して行こうと思うので、応援していただけると有難いです。


では、今回はこの辺りで……また次回!


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