紅天は散り逝きて
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
全て片付けたと油断していたのかもしれない。
「!! どいて!!!」
「え?」
ここに迷い込んだのか、あるいは探しに来てくれたのか分からないけど。
目の前に幼馴染の■■が現れて、そのすぐ後ろにいる■■■■が
今まさに、■■の命を刈り取ろうとしている。
そして、彼は今自分が命の危機にある事に全く気が付いていない。
アレは今からやっても絶対に間に合わない。
ほぼ、無意識だった。
そう判断した瞬間、私は幼馴染の元に駆け出して彼を突き飛ばし
―――ドスッ!!
そんな音と共に何かが私の体を貫いた。
「………ッ!」
同時に、常人ならば確実に気が狂うであろう激痛が身体を走る。
傷口から溢れ出す血が制服を真っ赤に染め上げていき、口からは
逆流した血が吐き出される。
「……■■!!」
誰かが私の名前を叫んでいる。
でも、今の私にはその声に応える余裕など全く無い。
崩れ落ち倒れそうになる体を必死に、力を振り絞るかの様に支える。
私がここで倒れたら、この■■■■は間違いなく幼馴染を、そして
関係の無い人々を虐殺するだろう。
そんな事許せる筈なかった。
「ッ……! 消え……な……さい!!」
大量の出血の為か霞む視界の中、なんとか意識を保ち、目の前にいる
■■■■を見据え、右手に持つ刀に残った力を纏わせ
―――ザン!!
真っ二つに切り捨てた。
「■■■■■■!!!!!」
耳を塞ぎたくなるような断末魔を上げながら、■■■■は塵となって消えていく。
パキィィィィィィ!!!
同時に限界だったのだろうか、振り抜いた刀の刀身が、まるで役目を終えたかの
様に音を立てて砕け散った。
目の前の■■■■が完全に消滅した事を確認して―――
「何とか……終わったわ……ね」
もう限界だった。
周囲の安全を確認すると同時に、私は体を支える事が出来ずに
自分が作った大きな血溜りの中へと崩れ落ちる。
―――ここまで、かぁ
崩れ落ちていく僅かな時間、そんな事を思う。
身体の状態、傷の深さ、出血の状況。
もう、助からないは明らかだ。
「■■! ■■!!」
私へと呼びかける声と共に、私の体が彼に抱えられる。
「しっかりしろ! ■■! くそぉ、血が止まらない!!」
必死にそう叫びながら、止血しようとしてくれるが一行に止まる気配はない。
「いいよもう、私は……これまでの……様だから」
「馬鹿か! 今から医者に―――」
彼の行動を遮る様に、私は何とか右手を彼の顔の前に挙げる。
「いいの、この傷にこの出血量だから、もう……私は助からない」
もう完全に死んでも可笑しくないほどの出血に、腹に開いた風穴。
既に視界は殆ど見えてなく、辛うじて意識を保っている状態である。
身体の感覚も最早無く、先ほど手を挙げたのが限界だったのか
今は指先す動かせなそうにない。
「何で! 俺を庇ったりしたんだ!」
「あはは……何故かしら……ね、……わたしにも、良くわからない……わ。
ただ、気付いたら……貴方を……突き飛ばしていた……」
息も絶え絶えに言葉を紡いでいく。
「多分、また……あの時の…様に…誰かを失うのが……怖かった……だと思う……」
走馬灯の様に蘇るのは約十数年前の、本当に幼く未熟だった頃の罪の記憶。
護る事の出来なかった、背負い続けた過去。
同時に、死の間際に過去の記憶が走馬灯の様に思い出されるのは
本当なのね、っと他人事の様に思う。
「だからって、自分を犠牲にしてどうするんだ!!」
ああ……本当に、この幼馴染は優しいと思う。
幼い頃、親族どころか両親にすら愛情を与えられなく、まるで割れ物を扱う
かの様に接しられ続けた私に、普通に接してくれて様々な感情を教えてくれた。
彼らがいたからこそ、今の私が居るのだ。
だからこそ私は―――
「ごめんね……、そして、今まで……ありがとう……」
「おい、何……言ってんだよ■■」
私を抱く彼の手が、震えるているのを感じながら
ゆっくりと眼を閉じる。
「私の……為に、悲しんで……くれて……本当に、ありが……」
「お、おい! 確りしろ!! 俺はまだお前に―――――――」
私の意識が徐々に闇の中へと落ちていく。
ただ、その直前には私は願った。
―――どうか、適うならば彼らが……。
心優しい彼らが、私の死に囚われる事無く幸せに生きてほしい。
その願いと共に、私の意識は深い闇の中へ完全に飲み込まれていった。
始めまして、紅の烏という者です。
本来なら私は二次創作がメインなのですが、絶賛スランプというかそういうもの
に陥ってしまいまして、息抜きというか、気分転換に練習も兼ねて初めてですが、思い切って一人称の小説を書いてみることにしました。
さて、この小説の概要ですが……まあよくある剣と魔法の異世界物です。
今回投下したのは、俗に言うプロローグであり、まだ物語の本編にすら入っていませんorz
でも、次回からちゃんと入りますのでご安心ください!
更新速度は気まぐれですが、初めてのオリジナル小説と言うのもあり、頑張って執筆して行こうと思うので、応援していただけると有難いです。
では、今回はこの辺りで……また次回!