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ギルドの受付嬢、腹黒すぎてごめんなさい  作者: 雨宮 徹


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2/5

その間違い正します

「ほら、見てください! これ、オーガの角ですよ!」


 S級ドラゴンを狩ってストレス発散をしたのに、すぐに新米冒険者アイクに絡まれた。はあ、だるい。


 彼は、不気味な茶色をしたモンスターの角を振って大はしゃぎだ。若いっていいねぇ。


「冒険者をはじめて三日。これは、歴代の猛者もなしえなかったことです!」


 新米は元気がいい。だが、取り柄はそれだけ。そのうち、目が濁り、金だけを求めるようになる。私は、それを何回も何回も見てきた。飽きるほどに。


「なるほどね、それはすごいわ。将来はものすごい冒険者になるに違いないわ!」


 もちろん、本心ではない。歴代の有名冒険者たちは、初日にオーガを仕留めている。


 アイクが身につけている銀色の鎧は、モンスターの返り血で鈍い色を放ち、血でどろっとしている。その上、臭い。鼻がひん曲がりそうだ。とっとと離れて欲しい。


 そして、それよりも問題なのはアイクが持っている角はゴブリンのものだ。新米であろうと、ゴブリンとオーガの違いくらい分かって欲しい。いや、体格みりゃ分かるでしょうよ。しかも、ゴブリンを討伐するだけで、瀕死回数二回はやばい。


 ギルドの一画では、昼から酒を飲んでいる冒険者たちが、「面白い新米だ」という視線を送っている。中には、ドラゴン討伐専門家のサイガの姿もある。彼も彼で面倒だが、今はアイクをどう対処すべきかだ。この新米にゴブリンとオーガの違いを分からせる必要がある。でも、どうやって?


「クリステルさん! 僕が、このギルドをオークの群れから守ってみせます!」


 意気込みはいいのだけど。待って、新米は本物のオーガを見たことはないはず。それこそが、問題なのよ。


「アイク、明日もギルドに来てくれる? いいものを見せてあげるわ」


 にこやかに、さらに意味ありげにウインクをする。


「もしかして、Fランクから格上げですか!? Eランクの証明書とか?」


「それは、明日のお楽しみ」





「さて、ここがオーガの出現ポイントね」


 オーガと対峙するなんて、いつぶりかしら。奴らじゃあ、私のストレス発散の相手にもならない。肩をぐるぐる回す。


「あ、あそこにいるじゃない」


 オーガは群れていた。その数、十匹。何かを囲んで地面にのっそりと座っている。


 おそらく、食事時ね。


「ショータイムといきましょうか」


 私は、足元に落ちていた木の枝を、ポイっと投げて注意を引きつける。


 「いい遊び相手を見つけた」とばかりに、オーガが近づいてくる。


 それは逆で、オーガたちが私の遊び相手になるのよ。いや、遊びにもならないか。


 受付用のスカートを引き裂き、走る準備は万端。


「いくわよ!」


 紙を切り裂くペーパーナイフのように、群れの間を一直線に走り抜ける。しかし、オーガたちに異変はない。


「ガガギグガ……」


 こちらを振り向こうとしたその時、オーガたちが血飛沫を撒き散らして倒れ込む。首がゴロンと音を立てて転がった。


「よし、討伐完了!」


 峰打ちのつもりが、誤って首を切り落としてしまった。


 大きな問題はないけれども。


「さて、これで明日の準備はOKね」


 オーガだったソレを、ズリズリと引きずりながらギルドに向かう。


「あ、担げばいいのか」


 オーガの体格は立派で、ともかく重い。でも、私には楽々と運ぶ腕力がある。ストレス発散のドラゴン殴りによって鍛えた腕力が。


 オーガを右肩に担ぐと、いつの間にか鼻歌を歌っていた。明日起きる出来事にワクワクしながら。





「クリステルさん、今日も来ましたよ! それで、ランクアップの証明書はどこに?」


 アイクはカウンターに身を乗り出しているが、どうやら勘違いをしているみたい。「証明書をあげる」と、言った記憶はない。「いいものを見せる」、それが正しい。


「昨日はね、凄腕の冒険者がオーガを十匹も退治してくれたの! ほら、あそこにオーガの剥製があるわ!」


 ギルドの窓を指し示す。


 あくまでも、慎重に、さりげなく。


「へえ、十匹ですか。でも、冒険者歴三日の僕が一匹倒せたんですから、猛者がたった十匹じゃあ、凄腕とは言えないですね」


 アイクは、鼻で笑いながら窓の外を見やる。しかし、彼の表情は一瞬で凍りついた。


 それもそのはず。そこには、ちゃんとしたオーガが並んでいるのだ。アイクが倒したのは、雑魚モンスターのゴブリン一匹。それも、瀕死回数二回で。


 どうやら、自らの過ちに気づいたらしい。


 顔が一気に真っ赤に染まり、まるでリンゴのようだ。


 さあ、新米冒険者よ。この恥を乗り越えて真の冒険者になりなさい。


「へっ、新米。クリステルちゃんにかっこいいところ見せたかったんだろうが、ダサいな。まあ、誰だって最初はそんなもんだ。早く俺のようになるんだな」


 ドラゴン討伐専門家のサイガは、アイクの肩をポンポンと叩く。取り巻きは、ドッと笑い声をあげる。


「クリステルちゃん。俺がドラゴンの群れを討伐して、ギルドを守ってみせるさ」


 サイガがニコッと笑うと、真っ白な歯がきらりと光る。


 彼の白い歯は、実は初任務でゴブリンに殴られたせいで入れ歯よ。昔は“サイガ・ザ・トゥースレス”ってあだ名がついてたんだから。


 そして、昨日誰かが言っていたセリフそのまんまだ。オーガがドラゴンに変わっただけ。アイクは可愛げがある分マシだ。


 それに、サイガはF級ドラゴンしか相手にしない。それでドラゴン討伐専門家を名乗っているのだから、ダサいことこの上ない。


 さあ、次は本物の無能冒険者を相手にする時間ね。どうやって調理しようかしら。

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