表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【短編小説】あやめちゃん

掲載日:2025/12/18

ちょっとお父さんさ、いつも帰ってくるときに洗ってきてって言ってるじゃん。

全部よ、全部。

ほら、マンションの入り口のところにあるじゃん、散歩連れてった犬の足とか洗うとこ。

あそこで洗ってきてよ。

なんでって……もうさ、臭いからに決まってるじゃん。言わなくても分かるでしょ。

汚いし。

タオル?仕事に持っていけばいいじゃん。

え、なんで私が持っていかなきゃいけないの?

ほら、早く行ってきて。


おかえり。

ちゃんと洗ってきた?

耳の後ろとか脇とか、足の指の間とか。

あ、ちょっと、ほら、垂れてるから。汁が。

あーもう汚いなぁ。自分で拭いといてよね。

洗濯物とかも一緒にしないで。

汚れ移っちゃうから。

ほんとに信じらんない。


え、ちょっと、どうしたの?

……え?

失敗?

なによ、それ。

ちょっと、動かないで。

ここ抑えてて。

いい?


わかったから。

あとはわたしが何とかする。

大丈夫よ、お父さんより上手いから。

もう休めば?

お父さん、アレじゃん。

馬鹿みたいに正面からいくじゃん。

お父さんが好きな野球で喩えるとさ、なんか強い四番のひと?大谷翔平みたいな?に全部ストレートで勝負する?みたいな感じじゃん。

そういうの、古いよ。全然ダサい。

美しさとかさ、いいから。

だって失敗してるじゃん、それで。

もっと狡くなれば?

卑怯とかじゃないでしょ。

ベテランなんだしさ、相応のやり方じゃん。


じゃ、行ってくるね。

もうすぐお母さん帰ってくるから、動かないでじっとしてて。

お父さんのやつどこにあるの?

内ポケット?

じゃあちょっと借りるね。

大丈夫、使い方は知ってるから。

うん。

大丈夫、目標のひとは知ってるから。

余裕だって。楽勝楽勝。

うん、バイクで行く。

うん。

大丈夫、ナンバーは偽造のだから。

うん。

鍵だけ。財布も免許証も置いてく。

うん。

ハンカチも携帯もここに置いてくから。

大丈夫だって、うるさいなぁ。

しつこいって。

ハタチの日まで死なないから大丈夫。

うるさいなー。

はい、指切りげんまん。


じゃ、行ってきまーす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ