消えた仲間と森の影
朝の光が森に差し込む。
でも、その光があたたかく感じられないほど、森は静まり返っていた。
診療所の前でリナは立ち止まり、隣のベッドにいるはずのカイを探す。
――そこには誰もいない。
「カイ……?」
呼ぶ声は、朝の霧に吸い込まれ、かすかに震えるだけ。
リナの胸に、不安がじわりと広がる。
隣にいるはずの仲間がいない。
それだけで、世界が少しだけ崩れたように感じられた。
レオとミナも辺りを探している。
「足跡……残ってない?」
ミナの手が小刻みに震える。
レオは眉をひそめ、普段の冷静さが消えかかっていた。
「誰かに連れ去られたのか……?」
リナは薬箱を握りしめ、深く息を吸う。
「絶対に守る……カイも、みんなも」
胸の奥で、小さな炎がゆらりと揺れる。
恐怖を押しのけるように、希望が少しずつ膨らんでいく。
その時、森の奥で黒い影が揺れる。
風に乗るように、森の中をすり抜け、リナたちの前に現れる――
その影は不気味で、でもどこか見覚えのある輪郭を帯びていた。
「……誰……?」
リナは息をのむ。
カイの行方を追うため、迷いながらも影に足を踏み出す。
レオも、ミナも、互いに手を握り合いながら進む。
恐怖と不安はあるけれど、絆がそれを押し返してくれる。
森の霧の中、影は揺れ、時折光を反射する。
リナはその一瞬一瞬に、仲間の笑顔や言葉を思い出す。
「大丈夫……私たちなら、きっと」
心の中で何度も唱える。
霧が少しずつ薄れ、朝の光が影をぼんやり照らす。
影はまだ森の奥で潜んでいる。
でも、リナたちの心には恐れよりも、強い決意と希望があった。
「行こう、みんなで……」
リナが微笑み、仲間たちも力強く頷く。
霧が光に溶けるように、未知の冒険が再び彼らを包み込む――
友情と絆、そして新たな試練が、静かに幕を開ける瞬間だった。




