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転生したら病弱少女だったけど、看護師スキルで異世界の医療を改革します!2  作者: 櫻木サヱ
暁の約束

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崩れゆく祈り

風が、夜の森を裂くように吹き抜けた。

診療所の窓がカタカタと震え、灯したランプの炎が不安げに揺れる。


「また、風……強くなってきたね」

リナが呟くと、カイは無言でカーテンを引き、外を見た。

森の向こう――遠くで、黒い霧が渦を巻いている。


「これはただの天候じゃない。封印が……緩んでる」

カイの声に、レオが顔を上げた。

「まさか、あの噂……“森の主”が?」


空気が一瞬にして重くなる。

ミナが不安げにリナの腕を掴んだ。

「ねぇ、どうするの? 避難したほうが――」


リナは首を横に振った。

「この村を見捨てるわけにはいかない。

 ここには、助けを待ってる人がいるの」


その声は震えていなかった。

むしろ、静かで、強い。

あの日――もうひとりの“リナ”に言われた言葉が胸の奥で響いていた。


『誰かを救いたいという願いが、あなたを導いたの』


彼女は診療所の奥の棚を開け、包帯と薬をかき集める。

「レオ、物資を。ミナは子どもたちを安全な場所へ。

 カイは……外の様子を見てきて」


「危険だ。お前こそ――」

「わかってる。でも、行かなきゃ」


リナの目に宿る決意を見て、カイはそれ以上何も言わなかった。

ただ短くうなずき、剣を握りしめて外へ出る。



嵐が吹き荒れる中、リナは村人たちを診療所に避難させていた。

泣きじゃくる子ども、怯える老人。

その一人ひとりの手を取りながら、リナは笑顔を作った。


「大丈夫。ここにいる限り、安全だから」

――ほんとうは、自分だって怖い。

けれど、誰かの痛みに触れた瞬間、恐怖は小さくなっていく。


そのとき、ドアが激しく叩かれた。

「リナ! 開けろ!」

カイの声だった。

扉を開くと、全身泥まみれのカイが倒れ込むように入ってくる。


「カイ!?」

「……来る、奴が……封印が、完全に……」


言葉を言い終える前に、地響きが鳴った。

診療所の窓が粉々に砕け、冷たい風とともに“闇”が吹き込む。


外には、巨大な黒い影。

その中央に――仮面をつけた人影が立っていた。


「……やはり、お前たちだったか」

低く響く声に、リナは息をのむ。

仮面の下から覗く目。どこかで見たことがある。


「あなた……まさか……!」


仮面の人物はゆっくりと笑った。

「リナ。君がこの世界に来た理由――それを知りたくはないか?」


その瞬間、リナの胸の奥で“オルゴールの旋律”が鳴った。

断片だった記憶が、ひとつに繋がり始める。


視界が揺れ、過去と現在が重なり合う――。


風が止み、世界が静止した。

カイがリナを抱き寄せ、震える声で言う。


「リナ、忘れるな。俺たちは……一人じゃない」


その言葉に、リナの瞳が揺れる。

彼の腕の中で、彼女は小さく頷いた。

そして、心の奥で誓う。


「もう逃げない。今度こそ、誰かを救うために」


外では、仮面の影が微笑んでいた。

夜明け前――祈りの鐘が、崩れ落ちる音がした。


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