揺らぐ心、交わる刃
光と闇がぶつかり合い、森全体が震えていた。
剣を振るうたび、空気が裂け、火花が散る。
カイと仮面の男——レオン——の戦いは、まるで二つの運命が衝突しているかのようだった。
「なぜ……俺たちを捨てた!」
カイの叫びが森に響く。
返ってきたのは、仮面の奥から漏れる低い声。
「捨てたんじゃない……守れなかったんだ」
その言葉に、カイの胸が痛む。
守れなかった——。それはカイ自身も、何度も夢で聞いた言葉。
かつての戦場で、互いを救えず失った夜の記憶が、雷の閃光のように脳裏をよぎる。
「だったら、なぜ仮面をつけている!」
「……俺は、もうお前たちの知るレオンじゃない」
レオンの声には、僅かに震えが混じっていた。
その一瞬の迷いを見逃さず、リオが横から切り込む。
「カイ、今だ!」
しかし、レオンの剣が軽く振られた瞬間、風が爆ぜた。
リオは地面に叩きつけられ、血の味が口に広がる。
「リオっ!!」
カイが駆け寄ろうとするが、レオンが立ちふさがる。
その瞳の奥には、確かに“悲しみ”があった。
「カイ……お前がもっと強ければ、俺は——」
言葉が途中で途切れ、仮面の奥から一筋の涙がこぼれ落ちる。
カイの動きが止まる。
その間に、レオンの姿が霧の中へ消えていった。
静寂。雷鳴の余韻だけが残る。
リオを抱き上げながら、カイは空を見上げた。
「……まだ、終わってない。あいつは、助けを待ってる」
リオが弱々しく笑いながら答える。
「……まったく。あんた、ほんとバカだね。でも……それが、あんたらしいよ」
雷鳴が再び遠くで鳴り響いた。
仮面の向こうにある“真実”は、まだ霧の奥に隠されたままだ。




