影との対峠
霧が深く立ち込める森の中、カイと仲間たちは足を止めた。
目の前には、銀色の仮面に覆われたレオン――いや、かつての仲間の影が静かに立っている。
「……カイ」
その声に、カイの胸はぎゅっと締め付けられる。
かつての笑顔、冗談を言い合った日々、共に戦った記憶。
それらが一瞬にして、目の前の冷たい仮面に飲み込まれた。
「戻ってきてほしい……でも、今の君は――」
カイの心は葛藤で揺れる。
リオが短剣を構え、ノエルは杖を握り直す。
「もし、本当に敵なら容赦できない」
「でも……」カイの言葉は続かない。
銀色の仮面の男は、一歩前に踏み出す。
その動きはゆっくりで、まるで感情を押し殺しているかのようだ。
「戦うつもりか?」
カイは拳を握り、深呼吸する。
「……その前に、君の心を取り戻す!」
雷鳴が遠くで轟き、森全体が不気味に揺れる。
影の残滓の力が微かに周囲に漂い、空気を張り詰めさせる。
リオとノエルが同時に攻撃の構えを取る。
カイも魔力を刃に込め、仲間たちと共に一歩踏み出した。
「俺たちは、過去に囚われない!」
カイの声が森に響き渡る。
その瞬間、銀色の仮面の男の瞳の奥で、かすかな動揺が揺れる。
過去の記憶――友情や信頼――が、ほんの一瞬、影を裂いたのだ。
衝撃が走る。剣と魔力がぶつかり、光と闇が入り混じる戦闘が始まる。
森の木々は揺れ、風が旋回する。
仲間たちの声、カイの叫び、雷鳴の轟き――すべてが交錯し、森は激しい戦場となる。
その戦いの中で、カイは心の奥底で誓った。
「君を、必ず連れ戻す――どんな闇に飲まれても」
仮面の男の動きが、一瞬止まる。
その隙を見逃さず、カイは真剣の先を彼に向ける。
光と影が交わる瞬間、森全体に緊張が走る――。




