影の残滓
森に静寂が戻った診療所の周囲。
しかし、戦いの爪痕はまだ生々しく、空気には微かな緊張感が漂っていた。
カイは深呼吸をして、倒れた影の残骸を見つめる。
「……まだ完全には消えてない」
仮面の男が残した闇の気配が、森の奥にほんのりと残っている。
それはまるで、夜が明けても残る朝霧のように、静かでしぶとい存在感だった。
リラはカイの肩に手を置き、優しく微笑む。
「でも大丈夫。私たちが一緒だから」
その言葉に、カイの胸の奥の不安が少しずつ和らいでいく。
シーナは魔法陣の残骸を確認しながら呟く。
「影は消えたわ。でも、これで終わりじゃない」
彼女の目は、これから起こるであろう試練を見据えている。
ミナトも、黙々と診療所内の物資を整理しながらつぶやく。
「でも、これで俺たちは少し強くなったな」
戦いの疲労はあるが、心の底には達成感と仲間との信頼が芽生えていた。
カイは拳を握りしめ、森の奥を見つめる。
「これからも、守り続ける。誰も、一人にはさせない」
その声には、決意と覚悟が滲んでいた。
夜空には星が瞬き、月光が森を優しく照らす。
影の残滓は、確かにそこにある。
だが、カイたちはもう恐れる必要はない。
その背後には仲間の存在があり、共に歩む未来が待っている。
リラがそっとカイの手を握り、微笑む。
「一緒に、進もう」
カイも微笑み返す。
「ああ、ずっと一緒だ」
森の奥の霧がゆっくりと晴れ、診療所に朝の光が差し込む。
影の残滓は完全には消えていない。
だが、その存在が恐怖ではなく、未来への試練として感じられるのだった。
カイたちは深呼吸をし、互いの存在を確かめ合い、次の戦いへの覚悟を胸に刻む。
森と診療所に静かに広がる光は、戦いの終わりと、新たな希望の始まりを象徴していた。




