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影の再来
森での戦いから数日後、診療所は静かな日常を取り戻していた――かに見えた。
「……これ、本当に平和なのかな」
リラが窓の外を見つめながら小さく呟く。
カイは治療器具を手に、微かに揺れる光の中で手を動かす。
だが胸の奥に、昨日の夜の“影の感触”がまだ残っている。
仮面の男の低い笑い声、冷たい視線、そして森の中で感じた“生まれたばかりの闇”。
「リラ、皆もそう思ってるだろうけど……奴はまだ動いてる」
カイの瞳が真剣に光る。
「俺たち、もう逃げられないんだ」
そのとき、診療所の外で風がざわめき、森の方向からかすかな足音が響く。
誰か――いや、何かが近づいてくる。
「来る……」
リラが息を呑む。
影は一瞬、森の霧に溶け込み、光と闇の間に浮かぶ。
仮面の男の存在が、じわりじわりと診療所を包む。
「準備しろ、皆。次は本気だ」
カイの言葉に、リラもシーナもミナトも固く頷く。
その瞳には恐怖ではなく、覚悟と信頼が宿っていた。
森の奥、闇の中に潜む影。
それを乗り越えた先に、真実が待っている――。




