森の奥と新たな脅威
霧が立ち込める森の奥。
カイとリリアは、診療所で蘇った微かな記憶を胸に、進むべき道を探していた。
「……気をつけて。ここは普通の森じゃない」
ミナトの声が、静けさの中に響く。
葉の隙間から差し込む光も、どこか頼りなく揺れている。
突然、枝の陰から銀色の仮面をつけた男が現れた。
「よく来たな、星の継承者たちよ」
低く冷たい声。森の静寂を切り裂く。
カイは咄嗟にリリアの前に立つ。
「……君を傷つけさせない」
リリアは小さく頷き、両手を前に構える。
微かな魔力の光が、手から森に広がり、木々を淡く照らした。
「この森の力……ただの自然じゃない」
カイの瞳が光る。
記憶の断片が蘇り、前世での感覚とリンクする——
敵の魔力を感じ取る、本能的な警戒心。
仮面の男は笑う。
「さあ、試練だ。君たちの絆がどれほどか、ここで確かめよう」
森全体がざわめき、光と影が交錯する。
樹々の間から、銀色の光の獣が現れる——
異世界の魔獣、森の番人だ。
カイとリリアは同時に動く。
魔法と技術、そして看護の知識が融合した不思議な光が、森の空気を切り裂く。
一瞬の沈黙、そして魔獣が後退する——命を脅かす力に対して、ふたりの信頼と絆が守りを作る。
「……大丈夫、カイ。私たちなら、乗り越えられる」
リリアの声に、カイは強く頷いた。
森の奥深く、まだ知らぬ試練が待っている。
だが、ふたりの間に芽生えた信頼が、どんな困難も乗り越えられると教えていた。
霧の向こう、光が瞬く。
——新たな冒険の始まりを告げる、森の呼び声だった。