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バレンタインデート当日③

主人公たちのバレンタインのすれ違いの内容を忘れてしまった方向けに、あらすじを。

作者の章構成が下手で申し訳ないです!

もしあらすじ読んでも分からないという方は、第一章の最初らへんを読んでいただけると多分分かります。


(あらすじ)

来海は、バレンタインデー当日に、碧に渡したバレンタインチョコの入った箱の底にメッセージカードを仕込んでいた。

そのカードには碧への告白の言葉が書かれてあった。

しかし、何故かカードは入っておらず、当時は碧は"告白"だと気付かなかった。


しかし、来海はカードが入ってると思ってる。

↑ここ大事


ただいま、その回想中。



来海から毎年貰っているバレンタインチョコ。

義理か、本命か。

直接聞いたことはないけど、多分こっちの方だろうと解釈している。


そんなチョコが、ある年だけ、なかった。


その頃のことを………俺は忘れたいと願っているのに、忘れてはいけないともう1人の自分が言う。


こんな日に、思い出したくなかったのに、あの頃の君の姿を思い出してーーーーーー、




「今年はね、ドーナツにしたの!オレンジは砂糖漬けだけど、甘すぎないようにしてるから甘さ控えめ。碧くんも多分、食べれると思う!」


彼女のブランコが、きい、と鳴って、俺の目を真っ直ぐに見つめた。


来海は、わくわくといった具合で俺に報告した。料理上手な来海は、お菓子作りも才能がある。

いつもの彼女なら俺の反応を気にして自信がなさそうに訊くのだろうけど、お菓子作りの分野には確かな自信を持っていた。

早く感想が欲しいと言わんばかりに、興奮していて、可愛いなあと思う。


俺は、彼女に促されるまま、青の箱を開けた。蓋を取ると、チョコ掛けのドーナツに、キラキラと光る砂糖漬けのオレンジが細かく刻まれて散らばっていた。

プロなのか。彼女の本気が伺える1品だった。


「おお、すげぇ……」

「うふふー」


思考するまでもなく、そんな感想が俺の口からポロッと飛び出した。

改めて、凄い美少女を幼馴染にもらったものである。


彼女は、はっ!と途端に緊張した面持ちになって、俺から距離をとった。

何だろうか。

えっと、と彼女は、俺とは反対側の無人のブランコに視線をやって、自分の指を組み合わせた。


「そ、それでねっ、碧くん……、えっと、箱、よく見てね……見ててね!ほんとに、ほんとに、よくよーく見てねっ!?もうあのっ、箱に穴があくレベルでよく見てくださいーっ!」

「……?ああ」


良くない。今日はバレンタインだ。今を楽しまなければ、いけないのに。


思い出したくない記憶に蓋をしようとすると、思考を放棄することになる。

彼女の指示は…そうだ。

ぼんやりとした頭で、言われた通り、箱の中身をよく覗く。穴まで綺麗なラインを描いたドーナツが入ってる。


「な、何が入ってますか!」

「え……?っと、ドーナツ?」

「ドーナツは入ってるけど、もっと違うものーっ!」

「ええ…?」


俺は難問にぶち当たっていた。

本当によく見てみる。

うん、ドーナツだ。ドーナツが入ってるな。

正確な記述をするなら、透明なラッピング袋に入ったドーナツ。


来海がよく見ろと言うので、そのドーナツをちょっと持ち上げて、箱に敷き詰められている紙製緩衝材、いわゆるペーパーフィラーに何か仕込まれているのかと、よく観察した。

その緩衝材も持ち上げてみる。

すべすべの箱の底にたどり着いた。


「えっと……ドーナツ以外に、入ってるものがあるのか…?その、答えを教えて欲しいんだが…」

「わ、私に言わせるの…っ!?言えないから、その中に入れたんだよーっ!?は、恥ずかしいもん」

「は、恥ずかしい……?」

「そう……、自分で言うのは恥ずかしい、から…」


おい、待て。難問すぎる…!

ドーナツだよな?

緩衝材だよな?

はい、箱の底!


このお姫様は、他に何が入ってるとおっしゃるのかね…!?


言うと、恥ずかしいもの…ぉ…?


恥ずかしいもの……


恥ずかしいもの……


「あ」


俺は、思い当たるものがあった。甘ったるい男女のお決まりのやつである。……本当か?


「……ええ?」

「わ、分かった?やっと分かった?やっと見つけてくれたー!?多分合ってるから言ってみて!?」


来海は、何かそわそわして、自分の目を覆っている。

「緊張するー!」とますます、俺から距離を取っていた。


俺は、自分で口にするのが恥ずかしくて、ぽりぽりと頰をかいた。

うーむ、確かに、言うのが恥ずかしいなあ。


「……えっと、…………"来海の愛情"?」

「……っ、や、やだぁ、碧くん、そんなストレートなぁっ、た、確かにそのとーりだけどぅ…」

「あ、合ってる?」

「えっと……大正解、です…っ」

「ま、マジ…?」

「まじまじです。でもでもっ、そんなダイレクトに言われちゃうとは思わなかったけど……」



ま、マジか!

本気で?マジ…?

あの、甘ったるい男女のお約束の『隠し味は貴方への愛情』的なやつだったのか……?


あ、やばい。にやける。顔がめちゃくちゃ緩んでるわ俺。こりゃあ、来月の誕生日の告白の成功度、100パーと言っても過言ではないのでは…?

おう、にやける。にやけてまうー。


俺は落ち着かなくなり、自分の首元に手をやった。だけど、勇気を出して、来海の方を真っ直ぐと見た。


「…………えっと、そのー………嬉しい」

「………っ、!」


俺の素直な気持ちを伝えると、来海の顔がぼんっと熱くなった。そりゃそうだ。こんなん、…幼馴染同士なのに、甘すぎる……。


来海はそろそろり〜…と自分の手を目からどけた。

一回、視線を彷徨わせてから…

俺を、真っ直ぐと見上げた。

すっかり、熟れた瞳の色で、彼女は俺を見た。


「箱……、中見ててね……」


え?


「え……、えっと、俺は来海の顔が見てたいんだが」

「ひゃぁん、な…っ、で、でも、箱の中身が必要なのっ、全部は言い切れないから、箱の中見てて…」

「………お、おう……」


言われた通り、箱の中身を見る。

ドーナツである。


「その、碧くん、えっと、今年は頑張ろうかなって思って、その……碧くんが今見てる箱の中身……そのような形に、しました……」


ああ。

確かに。めちゃくちゃ頑張ったんだろうな…。

コンパスで描いたみたいに綺麗な丸だ。


ドーナツ。


「で、でも、何だかんだ不安で……」

「不安になる要素がどこにある?来海からこんなの貰えて、俺、すごく嬉しいんだが?」

「へぁ、ひゃ、………やめて碧くんのお得意の言葉責めしないでぇ……っ、言えなくなっちゃう……」

「駄目?」

「駄目じゃないけど……っ、嬉しいけど、その……えっと、続けるね……本当は碧くんが好きで居てくれなかったら、どうしようって思って、あげるの悩んだの……」

「これを……?」


俺は、箱を見た。

ドーナツである。


えっと、俺は確かに甘いものはあまり好きではないが……甘さ控えめのドーナツは好きだぞ?

あとーーーーー


「来海からなら、嬉しいに決まってるだろ?本音言ったら、……我慢しきれなくて、今すぐ食べたいくらいなのに?何でそんな不安に……」

「た、た、たた食べたい!?食べたい!?え、嘘、ちょっと待て、うううう嬉しいけど、碧くん飛ばしすぎじゃない!や、嬉しいけどぅ、へぇぁ……え?そ、外で食べるのは、その、駄目だけど、あの、えっ、どうしよう、お、お家ならいいよ……?」

「おー。お預けか……、まあ確かに外で食べるより、来海は家でゆっくり俺に食べて欲しいか」


ドーナツ。


「ちょっと待ってぇぇぇ、!??本当にそう言ってもらえて私すっごく嬉しいんだけど、急展開すぎるっていうか……っ、へ、は、碧くん結構実はガツガツさん…?」

「あ、すまん。俺そんなガツガツしてた…?いや、まあ確かに、来海に関することなら、まあ……そう、かも」


美味しそうだからなー。


ドーナツ。


「あ、碧くん……どうしよう、私上手くやれるかな………」

「どうかしたか?」

「へ……っ、ううん、何でもない…えっと碧くん…」

「ん?」


来海がちょっともじもじしながら、俺を見上げた。

意を決したように、目をきゅっとつむった。


「………そ、その、お部屋で、ゆっくり、食べてくれると、嬉しいです………」

「……ああ。大事に食べるよ。ありがとう」

「ひゃい」


来海は顔を真っ赤にさせて、俺から視線を逸らした。顔を覆う。……何故だろう。可愛いからいいけど。


「碧くん………もっかい、箱の中、見て…」

「うん」


ドーナツ。今日何度見ただろう。


「……その、箱の中にあるものをね。もう、見たら分かると思うけど…見たから碧くんは分かると思うけど………えっと、私、好きなの…!…」


箱の中。ドーナツである。


「ああ。当然だ。来海が好きなのなんて、昔から知ってるぞ?」

「ーーーーと、当然!?そ、そうだけど、確かにそうだけどっ、え、碧くんそんなキャラだったけ……?」

「え?俺、何か変なこと言った……?」

「へ、変じゃないよ!当たり前だね!確かにそうなんだけど!び、びっくりした…ぁ…」


来海は、驚いたように俺を見た。

何故だろう。


「えっと、じゃあ………箱の中にあるものなんだけどね。私は好き…えっと、…その、碧くんは、好きですか……?」



好き。


おおう、この時期にその単語を言わせるかね、来海…!ドーナツね、ドーナツのことだが、


………あ、いや、1ヶ月後にお前にそれを言う身としては、だいぶ……恥ずい。


いや、ドーナツを好きと言うだけだ。

ドーナツ好きですか?はい、好きです。の会話だぞ。

英会話なら、最初に習うやつだぞ。


俺は、できるだけ意識しないように努めて、彼女に言った。


「………えっと……俺も好き……だぞ?」



俺がそう言うと、来海は、目を見開いてーーーーー、


ふにゃりと笑った。

花の咲くような、満面の笑み。


「ありがとう、碧くん……」

「こっちこそ、ありがとうな。最高のバレンタインだよ」

「………っ、うん!」


そうして、俺と来海は笑い合って、思い出の場所でまた思い出を重ねた。



まだ冬なので、日が沈むのは早い。

俺と来海は、公園から自宅へと帰っていた。


「えっと、碧くん……それで、その……私的には、やっぱりえっと、今日は……まだ食べられるのは急展開というか、ゆっくりで、お願いできたら……」

「ああ」


頑張ってくれたんだと思う。

気合いを入れて作ったドーナツだから、俺にゆっくり味わって欲しいんだろう。


「さっきのは、冗談だ。……俺は、ゆっくり味わう派だから」

「じょ、冗談……。んも、もう…碧くんたら……」


そんな会話を交わして、俺と来海のベッタベタのバレンタインデートは終了ーーーーーーー、





******




今年のバレンタインデートについて、話を終えた俺はふぅ…と息をついた。妹の翠とは夕食を終えて、茶を啜っていた。


「お兄ちゃん」

「ん?」

「お兄ちゃんが悪いと思う。来海ちゃん、お兄ちゃんの発言のせいですごく大変だったと思うよ」

「ええ!?」


お、俺が悪いのか……?

いや、まあ、俺が悪いのか……。


確かに、ドーナツの話にしては来海の顔が赤すぎたなぁと思う。俺が気付くべきだった。

来海があんなに「箱の中見て」と言っていたのは、その箱の中に、彼女は俺への告白の言葉を書いたメッセージカードを()()()()()()()()だったから。


やっと納得が行ったーーーーーーー。


あれ?じゃあ、待てよ。

「食べたい」って、彼女はドーナツではなく自分のことだと思っていたーーーーーー?

あ!そーいうことかぁぁ〜!どうりでめっちゃくちゃ顔真っ赤にしてたと思った……

いや、恋人になった今、俺が彼女を食べたいと思ってるのは否定しないが、否定しないが、そんなすれ違いの仕方ある……?


おいおい、しかも!

てことは!

「好きなのは当然だろ」っていうのも、「(俺のこと)好きなのは当然だろ」って、解釈されてたってことかよーーーーっ!?

俺、そんなこと絶対言うタイプじゃないのに!?

シャイボーイなのに!?


うわ……改めて、何故彼女からの"告白"だと気付かなかった俺ぇ〜!!


しかし、現在残っている問題はただ1つ。

来海がバレンタインデーに俺に告白が通じてなかったことを自覚してしまった現在、残っている謎はたった1つだーーーーーー。


「それにしても、何で来海の俺への告白のメッセージカードが俺のもとではなく、来海の部屋にあるクッキー缶に…?」


そう。今朝に、来海の部屋に置かれてあったクッキー缶の中から、その例のメッセージカードが出てきたのだ。

しかし、来海はそのことを知らない様子だった。

だから、クッキー缶に入れたのは、来海ではなく、第三者の仕業ーーーーーということになる。

誰の仕業だ…?



俺がうんうん唸っていると、向かいに座っていた翠がコトリ、とグラスをテーブルに置いた。



「そのことなんだけど、お兄ちゃん……」


翠が大変言いにくそうに、眉を寄せた。

何だろうか。


そしてーーーー


がばっ!と俺に向かって頭を下げた。

テーブルに額のつくレベルで、この妹は何故か謝罪のポーズをしていた。

俺は突然の妹の行動に、目を丸くした。



「ごめんなさい、私のせいかも………あと、和泉も多分………」

「へ……?」


お、おい、どういうことだってばよーーーー!?


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