当日編④
お礼を言って、和泉との電話を切る。
来海に彼氏が居たことは世紀末の悲劇だが、その彼氏の愛の重め具合を知った俺は、戦慄していた。
………。
来海、大丈夫か?
俺との一件がバレたら、お前、彼氏に婚姻届書かされて軟禁されるらしいぞ……。
ここで、回想に入る。
10日ほど前のバレンタインから、彼氏が居る来海ちゃん。
しかし、昨日の時点で、来海ちゃんは俺との関係を改めず、部屋にのこのこ上がり、あろうことか俺の頭を撫で、頰を限界まで伸ばし、俺に最高級の膝枕を施していた。
倫理観の欠如っ!!
このままでは俺は浮気相手ルートになり、彼氏に処されて、来海は恐怖のゴールインをしてしまう。
………駄目だ。
そんなの、駄目だ!
好きだとはいえ、俺は来海を絶対に困らせたくない。
来海がひそかに叶えた恋を、どんなに邪魔したくたって、邪魔しない。
どんなに、
どんなに、邪魔したくても、ステイだ。
……はあ。
こんなに荒れ狂ってるのは、十何年分の恋愛感情ゆえだから、多めに見てほしい。
……だから。
来海の、俺へのスタンスを変えさせねばならない。
適切な男女の距離感とやらを、俺が彼女に気付かせてやらねばならないのだ。
俺が、幼馴染の倫理観を、更生させるーーーー
そして、いつか幼馴染の恋に、おめでとうと言ってやれる自分になる。
ただーーーーーー
それと同時に。
来海の彼氏へ!
お前がろくでもない奴だったら、奪ってやるから覚悟しておけーーーーと思ってしまったのは、内緒である。
いや、…………じ、冗談だ。




