残された彼氏候補は、ただ一人。
第二章、開始です。
この第二章で来海の彼氏がいよいよ判明。さあ誰かな。
誰か教えてくれ。
「颯……俺はもう、訳が分からない。合コンの男は空振りに終わったし、だからもう来海に彼氏なんて居ないんじゃないかと思ったら、やっぱり居た……」
俺は机に突っ伏して、窓辺の方を眺めていた。
俺の心情に全く合ってない、春の青空。
雲1つなくて、神様の当てつけかと思う。
俺はこんなに失意のどん底にあるっていうのに…!
相談を受けた颯は特に表情を変えず、ちょっと困ったように笑うだけだった。
「……ええ、うーん。…もう碧が宮野さんの彼氏ってことでいいんじゃない?」
「それは最高であるが、颯よ、そういうわけにはいかないのだ……」
何てことを言うのか。
来海ちゃん大好きな俺なら、今の颯の言葉で都合良く自分の脳を洗脳してたかもしれない。危ない。
「ええ?だって、宮野さんに碧以外でそんな人居る訳ないじゃないか。うちの学年中…いや、教師陣まで知ってるよそんなこと」
「……ううーん、だよなあ……来海には俺だけのはずなんだよなあ……」
「うわ無自覚で惚気てきたこの人……」
彼氏が居るのが信じられないくらい幼馴染の俺にべったりな来海ちゃんである。
やっぱり彼氏が居ることが腑に落ち切らない。
じゃあ、もうーーーーーー
最悪の可能性しか残ってない。
残された彼氏候補は、ただ一人。
…嫌だ。
それだけは、絶対に嫌だ……。
だから、その可能性を、見て見ぬフリをしていたのに。
颯は、はあと呆れたように息を吐いた。
まるで幼い子供に語りかける口調で、俺に声をかける。
「…碧。いい加減、僕は勇気を出して宮野さんに直接確かめるべきだと思うよ。絶対大丈夫だから。もう分かってるんでしょ、宮野さんの彼氏はーーーーー」
颯の声が耳に入ってこない。
俺の頭は鈍器に殴られたような衝撃に、ぐらつく。
めまいがした。
「最悪だ………」
顔を覆う。
颯が俺の顔を覗いた。
「碧。ちょっと話聞いてるかい?今、僕大事なこと言ったんだけど?」
珍しく不満そうな顔だ。
俺が全然颯の話に反応しなかったからだろう。
だが、すまん、颯。それどころじゃないんだ……!!
「颯。事態は、俺が思っているよりもずっと、大変かもしれないーーーー!」
「いや、今度は何さ!?また何の暴走しようとしてるんだよ!!」
颯が呆れ半分、驚き半分で、俺を見る。
「アイツだ……もう残された可能性は、アイツしかない……」
「いや、誰!?誰のこと言ってるの!?」
……っ、最悪だ!!クソ……っ、思えば全部腑に落ちるじゃないか……。
どうして来海が彼氏が居る身なのに、俺との関係を改めようとしなかったか。
何をしても、バレっこないからだ。
だって、アイツはーーーー
「今、ロサンゼルスなんだよーーーーー!!!」
「だから、何の話なのさっ!??ああ、もう!!」
******
ひゅゅーーーー。
飛行機が青空を、たった今飛び立った。
ガラス張りの向こうの景色は、今日は雲1つない快晴。
まるで自分を神が祝福してくれているようだ。
空港のラウンジで、青年はスーツケースをそばに寄せて、優雅にティータイムをしていた。
紅茶を口に含み、ソーサーにカップを置く。
カチリ、と食器が重なる音。
青年の整った造形を見た近くの女性客たちが、ぽっと顔を染める。
青年は、微笑む。
何ヶ月ぶりの帰国だろうか。
ずっと、会いたかった幼馴染に、ようやく会える。
「………さあ、久しぶりに俺の可愛いらしい幼馴染でも愛でるとしよう。楽しみだなあ、一体どんな顔をしてくれるやらーーーー」
うっすらと熱に浮かれた目。
思い浮かべるのは、2人の幼馴染の姿。
「もう1人の幼馴染。ちゃんと嫉妬していないで、歓迎しておくれよ?」
青年は、優雅に微笑んだ。
ついに、あの男がーーーーーー
第一章でもう一人の幼馴染については、ちょこちょこ伏線張ってはいたんですが、皆様お気付きでしたでしょうか?
気付いてたらすごい。




