合コン⑨
アンニュイな雰囲気を漂わせた中学の同級生、守下優斗。
彼が来海の彼氏なのかもしれないーーーと俺は現在、直接探りを入れているところ。
初っ端から戦いにすらなってない心理戦に負け、俺は次のフェーズに移ることにした。
要は、俺の心の平穏のため、来海の彼氏だという事実をいきなり明かされない程度に、直球の質問をする。
「……こ、この前の合コンで、守下さ。く、来海と会ってたらしいじゃん…?何か話した…?」
緊張でカミカミなのは、許してくれ。
歯の奥が、かちかち震えてんですよこちとら。
守下は、計算なのか天然なのか、首を傾げる。
「……そうだったけ」
オイィぃ!!!
お前がしっかりしてくれなきゃ、話進まんのよ!
表情全く読めないし…!
え、何!?それとも、これは守下的高度な心理戦ーーーーーっ!?
確かに中学時代。
無理矢理拉致られた生徒会室で俺は来海をどれだけ可愛いか守下に熱弁をふるってた記憶があるぞ…!?
俺が来海を好きなことくらい、一目瞭然!
当然、守下は知ってるハズ!
まさかこやつ!
俺が来海の件で探りを入れてるの分かってて、あえてはぐらかしてるパターン…なのか!?
俺の頰に、ひやりと汗が流れた。
心してかかれ、俺。敵は思ったより手強いである…!
少し踏み込んでみるか。
「ほ、ほら〜、佐渡に聞いたぞ?帰り際、何でも守下が来海のことを追いかけてた…的な?」
「………っ!?」
ここで、守下の顔に動揺が走ったぁ!!!
う、嘘だろ…っ!!
何かめっちゃ気まずそうな顔されてるしっ!?
マジで……?
マジでお前が…あの狂気の来海の彼氏、なのかーーーーーーー?
俺はショックと共に、まだ決めつけてはいけないとアクセルを踏んだ。
「……何か、来海と大事な話でも…あった?」
「………」
俺は来海の幼馴染というだけ。これに守下が答える義理などないが、真面目な守下は口を開きかけて。
そして、首を横に振ったーーーーー。
「…大倉には……言えないな」
「……っ!!」
今度は、俺が動揺する番だった。
ーーーーー嘘だ……何だよ、その言い方……
それじゃあ、まるで。
お前が、守下がーーーーー
来海の彼氏みたい…じゃあ、ないか………。
守下は、良い奴だ。寡黙だが、ストイックで仕事もできる。
その彼が、来海の彼氏ーーーーーー?
俺はいよいよ直面した真実に、胸が張り裂けそうだった。息が苦しくて、来海に彼氏が居ると知った日のあの苦しさが、再び込み上げて来た。
震える声で、真実を求める。
「………も、守下は……っ、お前が、まさか、来海の彼氏……なのか?」
「…………」
長い沈黙だったーーーーーーー。
「はあ?何言ってんだ?」
守下から溢れたのは、怪訝そうな疑問の声。
意味が分からないという顔をしていた。
そこには、嘘などない。
中学から知ってる守下の呆れ顔。
真実の痛みを覚悟していた俺は、キョトンとした。
「え?だって、今ーーーーーー」
その時。
コンコンコン…とパーティールームに、突如としてノック音が3回。
部屋の音楽が止まった。室内の男女たちは、何だろうかと扉に注目していた。
鍵はなかったので、やがてカチャリとその扉が開いたーーーーー
そこに現れたのは。
艶やかな黒髪を纏めた、絶世の美少女。
申し訳なさそうに、とてとてと俺に近寄る。
「碧くん……!ごめんね…寂しくて来ちゃった…」
渦中の本人、来海ちゃんのご登場であったーーーーーー。
確かに部屋の時計を見れば、『すぐ帰る』と来海に返信してから、もう1時間近く経ってしまっていた。
すまん、色々とそれどころじゃなかったんだ…!
心の中で謝罪。
ていうか何でここが分かったの…?
あ、翠か……家を出る前に翠にカウンセリングを受けた時、この店の部屋番号までポロッと話した記憶がある。
瞬間、部屋の誰もが突然現れた美少女に、目を奪われていた。無理もない。
注目された来海は、はっ…という顔をする。
気まずそうに肩を縮こませた。
「ご、ごめんなさい皆さん…!突然お邪魔して…っ、あの、どうかお気になさらず…?」
それは無理だと思うぜ、来海ちゃん……。
いや、それより守下の件はーーーーーーーー?!
いよいよ第一章も残すところ、あと2話!
作者は第二章を只今書いているとこです。
第一章が終わるまでには第二章のストックを書き終えたいなと。
読んでくださってる皆様、本当にありがとうございます。




