合コン⑥〜恐怖の土曜日〜
(あらすじ)
来海には彼氏が居るが、どうやらその彼氏とは先月の合コンで出会ったのではないかと思っている碧。
帰り際何やらいい雰囲気になっていたらしい男が来海の彼氏なのでは?と、その男との直接対決の場を佐渡に設定してもらった。
ようやく直接対決(土下座)のときーーーーー
↑今ここ。
さてさて、恐怖の土曜日がやって来たーーーーーー。
来海の彼氏といよいよ対面するかもしれない……
その恐怖が俺を蝕む。
朝起きた時から、ずっと憂鬱だった。
向こうが指定した約束の時間は、夕方の18時とだいぶ遅めだった。
そのせいでずっと落ち着かず、正直生殺し状態だった。
そんな俺の様子を心配した妹にカウンセリングを受けた。
大丈夫よ、お兄ちゃん。
そう言ってくれて、背中をよしよししてくれた。
天使か?
天使なのか?
和泉にまだこの妹を渡すわけにはいかんーーー
とか思ったが、和泉の方もじゃあお姉ちゃんは渡せないよ!とか言うかもしれなかった。
この妹は和泉にあげることにした。
いよいよ、17時38分。
まだ3月に変わったばかりで、夕方がやや暗い住宅街を抜けて、俺はサードンから教えられた場所に向かっていた。
ーーーーカラオケ店である。
馬鹿なのか、サードンは。
それとも例の来海の彼氏最有力候補さんが選んだのか?
シリアスなお話し合いに発展する可能性が高いんだぞ……?!
もっと、あれだ。ひなびた感じのカフェとかじゃないのか……?
熱々のコーヒーをぶっかけられるんじゃないの?
カラオケ店に向かうと、入り口にサードンが立っていた。相変わらずカラオケ店より、おしゃれな自習室が似合いそうな男である。
ひらひらとサードンが手を振る。
「おー来たー、アオイー」
「え、?何でお前が…?てっきり、俺は例の男と2人きりかと思ってたんだが…」
そういう話で場を設定してくれたはずなんだが。
メッセージ上のやり取りでもそう言ってなかった?
「あー、アイツ人見知りなんよアオイー。初対面の奴とかと話すの苦手だから。オレが仲介役ってわけよ」
「あ……、そ、そう……」
じゃあ仕方ないか。
確かに、俺も彼と2人きりなんて、どうすればいいか分からなくなりそうだし。
話がヒートしたら、サードンに途中離席してもらうくらいがちょうどいいのかもしれん。
俺とサードンは入店する。
予約されている部屋番号はサードンに事前に教えられてたので、俺も知っている。
左右に扉が沢山ある廊下を2人で歩く。
「アオイー。オレ、アオイーの顔見た時、ぴんと来たのよ。アオイー、なかなか綺麗な顔してるじゃん?万人受けかはわかんねーけど、絶対半人受けする顔なんよ。いや、4分の3人受けか?」
あの……褒めてるのか?
半人受けって何だ?万人の半分?
「まあ、とにかくレベル高いの。足りなかったんだよね。そう、ちょうどいいじゃんーと思ったんだわ」
「……あのー、話が見えないんだが……」
首を傾げる俺に、サードンは適当に返事をするだけ。
ていうか、まだ歩くのか?
このままだと一番端まで行きそうだ。
ーーーーー。
サードンの足がやっと止まる。
その扉の部屋番号は、事前に教えられていたのと一致している。
……あれ?
おい、待て。
何かここだけ扉の数少なくない…?
隣の扉との間隔が、なんか広いぞ。
「ようこそ、アオイー……もう、皆んな待ってるぜ」
「はっ?」
サードンが扉を開く。
そこに広がっていたのはーーーーーー、
回るミラーボール。
目がちかちかしそうな光。
壁一面のプロジェクターに映し出された、アーティストの映像。
歌っている男。
それに盛り上がる席の、男女たち。
熱に浮かされている空間。
これは、まるで……!!!
「……っ!?」
「アオイー。男女10人による豪華合コンにようこそーーーーー今夜は、盛り上がろうぜ」
「……なっ!?」
は、は、
嵌められたぁぁぁぁぁぁーーーー!!!!!!!!?




