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合コン①

合コン編、開幕です。

おやおや繋がり分からないぞ?と思われましたら、彼氏特定班発足会②を読んでいただくとよろしいかと存じます。






ちくしょう、何でこんなことにーーーー。


「大倉くん、何飲むー?」

「私、好みかも……」

「ちょっと、大倉くーん、楽しんでる?何か浮かない顔して…」


うう。

どうしてだ。

いつもなら、絶対騙されないのに……

あまりに俺が浅慮だった。


パーティー用のカラオケルーム。

友人と行くカラオケの個室とは、まったく広さが違う。

壁一面のプロジェクターには、今流行りのアーティストのMVが流れており、ミラーボールの光が目を刺激してくる。

10人ほどの男女が、その空間に集っていた。


俺はぐいっと強炭酸のジュースを喉に流し込む。

あー、醒める!!!


こんな場所に居ると来海にバレたら、どうなると思うか!?

俺、帰りたいです……。


しかし!

一方で、やらなきゃいけないことがある。


俺を騙してここへ連れ込んだ男への怒りに沸きながら、俺はターゲットの男に接触するのであったーーーーーー



******

1週間前。



俺はまた桜井さんに昼休みにお越し頂いてた。

来海の親友さんである。

前回の反省を生かし、今日は使われていない空き教室での集合だった。

今朝に廊下ですれ違った時に、昼休みにここへ来てくれるように桜井さんには、お願いをしていた。


「はぁー、来海にバレないようにここまでやって来なきゃいけない私の身になりなさいよ!」

桜井さんは、膨れっ面をする。

「大体、これ、スマホでやり取りすればいいんじゃないの?私と貴方がリスク冒してまで、直接会う必要ある?」

怒らないでくれ、ご足労大変ありがとうございます。


ただなあ。

俺がわざわざ桜井さんにこうして来てもらったのには、きちんとした理由があるんだ。


「……あのな、桜井さん。お知らせがある…」

「何よ?」

「俺のプライベートはもう存在しないのだよ…俺のスマホは、イコール来海のスマホだと考えてくれ」

「は?」

「来海ちゃん、ちょっと不安定期でだな?現在、俺のスマホの監視を強化中なんだ。スマホでやり取りする方がもはや命取り……」


元々パスワードは教えてある(教えさせられた)から、来海ちゃんはらくらく俺のスマホの中身を見れてしまう。

だけど、俺のスマホを巡回するのは、今までは不定期だったんだが、最近ほぼ毎日になっていた。

彼女の日課となりつつある。


なぜそんな不安定期に突入してしまったかというと、俺が来海に、あの日桜井さんと昼休みに体育館横階段で秘密裏に会っていた理由を吐かないからだ。

ちなみに、来海の彼氏特定班発足の日のことである。


来海本人から彼氏の存在を言及してくる可能性を考慮し、俺は一切彼氏の話は出していない。

来海の口から、他の男の名前が出たら死ぬので。

だからあの日桜井さんと、来海の彼氏を探し出そうと協力するために会っていた、と言うわけにはいかないのだ。


その俺の黙秘権の行使により、口にこそ出さないが不満が溜まったままの来海ちゃんの出来上がりである。


桜井さんは、口の端を引き攣らせる。

「やっぱり、貴方が来海の彼氏よね?」

「そうだったらよかったけど、現実はそうじゃないんだよなー」

「……何で彼氏じゃないのに、そんな束縛激しいのよ!?」

「幼馴染だからなあ…」

「いや、絶対違うから!?」


仕方ないのだ。来海王女は、昔からである。

桜井さん、受け入れるんだ事実を。


「改めて大倉くんのすごさが分かったわ……。貴方、来海にお願いされたら何でも受け入れちゃうんじゃない?」

「うーん、まあな…来海も常識の範囲内でしか要求してこないし」

「幼馴染のスマホを管理するのは、常識の範囲内なの!?」

「重いか?俺が許すから、いいんだよ」

「………は、はあ……そ、そう……」


今までドン引かれることが多かったんだが、桜井さんは今日は感嘆したらしかった。

うん、ラインが分からない…。


桜井さんは両腕を組み、壁に背中を預ける。

「ねえ、ところで今日私を呼んだのって、例の、合コンの件よね?」

「ああ、当然だ。その日のことを、来海が俺に隠してたんだぞ。今の彼氏と出会ったのは、もうそこしか考えられない」

「なるほど、ね……」

「というか、何で来海が合コンに行ってるんだ!」

「………」

だいぶ俺は怒ってますが?


桜井さんは、はあ…と息を吐く。


「あのね。それ、来海騙されたのよ」

「はあ!?」

来海が!騙された!?

はああああ!???


大倉碧ンヌは、激怒はした。

場合によっては、そやつらを処さなければならぬ。


「どういうことだ…?」

「ちょ、落ち着きなさい。…はい、えっと、…あのね。来海はあの日、部活の友達で遊びに行く約束してたんですって。あ、この子たちは女の子ね。なのに、それがどういうわけか、待ち合わせ場所に行くと男女混合のグループになってたんですって……」


世にも奇妙なお話である。

断末魔のような効果音が、俺の頭の中で鳴った。

あ、続けてください、桜井さん。


「その男子たちは、うちの学校の生徒だったり、他校の生徒だったり、色々居たそうよ。来海可愛いじゃない?他校でも有名なのは、知ってるわよね。その男子陣の中の他校生の1人が、来海にものすごく会いたがってたって」

「……っ、な!そいつか!!?来海の彼氏は、そいつなのか!??」

「はい、ステイステイ。それは分からないわね。ただ分かってるのは、その男子が来海を合コンに参加させたいって要求して、彼と交流があった来海の部活の子がオッケーしちゃったの。彼女も彼女で、別にお目当ての男子が居て、その人を連れてくるよう要求したみたいよ」

「……つまり、来海の知らぬ間に、来海を合コンに参加させようとする動きがあったと…」

「そういうこと」


来海は被害者だった。

可哀想に。


なるほど。見えて来たぞ、だいぶ。

探偵になった気分だ。


「俺的には、来海に会いたがってたその男子が非常に気になる!」

「ううんー、でもその線はないと思うわよ。来海、その人のこと嫌だったって言ってたわ。大穴で別じゃない?来海の会話に出て来てない男子とか」

「ふむむ……」


合コンに参加してたその中の誰かが、来海の彼氏かも知らないと思うと、俺は焦燥した。

だけど、想いは、過去の確定された過去を超越しない。

どんな想ったって、今来海に彼氏が居る事実は変わらない。


俺は腕を組み、唸る。

俺の作戦はこうだ。

「……その合コンに参加してた男性陣に、俺から探りを入れたい。実際に会って、来海の彼氏か否かを判断する」


直接対決だーーーーー。


思っていたよりも、するっとその覚悟が出来た。

俺の性格なら、もうちょっと尻込みするかと思ったが。

桜井さんの顔が、心配の色を浮かべた。

「すごい度胸だわ…大丈夫?もしも来海の彼氏に会ったら、貴方なら卒倒しかねないけど…」

「耐える。倒れない程度に、彼らと接触する」

「……もう、覚悟は決まってるってわけね」

「ああ」


俺は頷く。

俺の強い意志を受け止めた様子の桜井さんは、ブレザーのポケットから、スマホを取り出した。

恐らくその中に重要情報が入っているのだろう。

こほん、と桜井さんが改まった。

「…合コンに参加した全員とは残念ながら連絡先が繋がってないけど…合コンの主催者の男子とは、繋がってるわ」

「っ!流石、桜井さん!シゴデキ!」

「ん、もう。調子いいわね。私が何の情報も持ってなかったら、今頃貴方詰みだったわよ」

「大感謝でございます。今度好きなパンケーキでも奢ってあげます」

「来海が嫉妬しちゃうから、いいわよ」

確かに。

桜井さんにはまた別の方法で感謝を示すことにしよう。


桜井さんがスマホを揺らして、促す。

「ほら、貴方もスマホ出しなさい。その合コンの主催者の男子の連絡先送ってあげるから」

一瞬、言葉に詰まる。

「あのぅー桜井さん…?もう忘れたかね?俺のスマホイコール来海のスマホだと……来海がそれを見つけたら、絶対問い詰めてくる。送り主が桜井さんならなおさら!裏で2人で何してるの?て絶対言われる…ぅ」

「詰みすぎでしょ!!スマホ使えないのは、もう致命的でしょ!私はどうすればいいのよっ」


うーん。あ、じゃあアイツに頼もう。


「じゃあ、俺の友人の颯に送っといてくれ。颯のスマホでその男子とやり取りする。俺と教室で一緒だから、他クラスの桜井さんよりもスマホ借りてやり取りはしやすい」

「いきなり私から送られたら松枝くんびっくりでしょ…ていうかいいの?松枝くんはいいのかしら?……はあ、もう、ちゃんと説明しておいてよね!」

「ああ、了解」


俺の計画はいよいよ動きだそうとしていた。

来海の彼氏を見つけ出して土下座をし、何発か拳を喰らいつつ、抹消回避ーーーーーー。

頑張るぞ、俺……!




評価してくださっている方ありがとうございます!

いつも励みになっております。

最近の楽しみになりつつありまして。


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